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「打撃の極意」教えます。巨人・坂本勇人は工夫して数種類を使い分けながらタイミングを取っている(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月4日 9時26分

「打撃の極意」教えます。巨人・坂本勇人は工夫して数種類を使い分けながらタイミングを取っている(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)

5戦目は1安打だったソフトバンク柳田(C)日刊ゲンダイ

【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】#211

 前回のコラムで「走者一塁」の際に行う「片側リード」のやり方と重要性を述べた。相手投手に素早い牽制球を投げさせて、クセなどを見つけることが目的だ。この時、打者に「待て」のサインを出さないとダメなことを付け加えておく。

 今回は打撃編だ。打撃は「タイミング」が全て。プロでも必死に試行錯誤するのだが、私が指導している高校生も、タイミングが取れない選手が実に多い。だから、プロ野球を見て欲しい。

 まず目についたのは、日本シリーズを戦うソフトバンクの柳田悠岐だ。1、2戦はタイミングが全く合っておらず、振り遅ればかりで8打数1安打。始動が遅いと思っていた。こういう時はトップを早めにつくると改善されるが、第3戦で3安打、第4戦で2安打、第5戦で1安打とさすがの修正力を見せた。

 日本シリーズの5試合で「間」が取れていると感じたのは、ソフトバンクの牧原大成、DeNAの桑原将志。桑原は5戦で打率.391と好調だ。

 タイミングの取り方で工夫しているのは巨人の坂本勇人だ。

①左足を上げながら軸足の右足に寄せていく。

②左足を少し上げて2度ステップする。

③あらかじめ左足を引いておいて、ほぼノーステップで打つ。

 投手に合わせて数種類を使い分けながらタイミングを取っている。

 手をヒッチしてタイミングを取る巨人の丸佳浩も特徴的だ。動きが大きく、高校生には勧められないが、プロ生活の中であの形にたどり着いた。丸にはあれが合っている。

 ドジャースの大谷翔平は20センチほど小さくステップしてから、右足のかかとの上げ下げでタイミングを取っている。

 打者がトップをつくってからミートポイントに到達するまで0.3~0.4秒。高校生の130キロなら対応できるが、プロの145~150キロだと間に合わない。柳田のように、プロは早く始動する必要がある。

 タイミングを取った後のスイングで強調したいのは、バットを出す時にヘッドを立てるイメージで振ること。これは最近、高校生でも激増しているアッパースイングを矯正するためでもある。バットが寝た状態でスイングし、プロ野球で2000安打をマークしたのは、通算3085安打で歴代1位の張本勲さんと、巨人の坂本くらいしか、私は知らない。

 古くは巨人の王貞治さんが一本足打法で通算868本塁打を放った。王さんは、投手が足を上げた時に足を上げ、着地した際に着地するタイミングの取り方だったが、2段モーションやクイック全盛の近代野球でも対応できたか、見てみたかった。

「タイミングを合わせてヘッドを立てる」

 一言で言えば、これが打撃の極意だが、好打者でも7割は凡退する。プロでさえ一生追求し続けるほど難しいのだから、高校生はもっとタイミングの取り方を工夫して欲しい。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)

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