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追悼・楳図かずおさん 日刊ゲンダイに打ち明けた「グワシッ!!」誕生秘話と漫画界への“遺言”

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月6日 10時52分

追悼・楳図かずおさん 日刊ゲンダイに打ち明けた「グワシッ!!」誕生秘話と漫画界への“遺言”

漫画家の楳図かずおさん(C)日刊ゲンダイ

「グワシッ‼」──その日、赤白ボーダー柄の服で現れるなり、巨匠は第一声を発した。「漂流教室」「まことちゃん」などで知られる漫画家の楳図かずおさんが10月28日死去した。88歳だった。

 恐怖、ギャグ、SFと多彩なジャンルで独自の世界観を展開したレジェンドに、記者が日刊ゲンダイ「注目の人直撃インタビュー」の取材でお会いしたのは2022年3月のこと。「楳図かずお大美術展」で27年ぶりの新作となる101枚の連作絵画を発表。漫画の表現手法さえも超越した新たな挑戦が話題を集めた頃だ。

「言葉の勢いで、いきなり下りてきました。モノを力強く『グワシ』と掴むイメージかな」

 代名詞「グワシッ‼」の誕生秘話を優しい口調で語ってくれた楳図さん。最近は食事に気を使うと明かし、「食べたことのないものがあるとうれしくて買っちゃうけど、ホヤの味はちょっとね。ムリ」とほほ笑む。1995年に休筆し、漫画創作から遠ざかった経緯を聞くと、やや表情が曇った。

「『もうやめる時期が来た』と思い、やめたんです」と言うものの、画業の晩年には編集者から心ない言葉を浴びせられ、嫌気がさすこともあったらしい。しかし、デジタル作画が進む現在の漫画界に話題が及ぶと、言葉が熱を帯びていった。

「漫画は手描きの温かみ、血が通っていないと」「機械に頼り過ぎると、機械がなくなった瞬間に漫画が描けなくなってしまいます」──。やはり漫画が大好きなのだ。

「わたしは真悟」「神の左手悪魔の右手」「14歳」など未来を予見するような長編を残し、連作絵画の1枚には「終りのはじまり」という作品も。インタビュー当日は、核使用をほのめかすロシアによるウクライナ侵攻開始の直後だった。

「物騒な出来事を見聞きするうち、『人間は退化している』と考えるようになりました」「放っておいたら、ずっと退化しっぱなしで、人類が消えてしまう怖さはある」

■「漫画が成り立つ国はとても良い国」

 常に「少年・少女」が主役で「子供が少し引っかかる深い考えや思想的なモノ」を意識した数々の名作は今後も生き続ける。「漫画が成り立つ国はとても良い国」「政治や宗教などひとつのストーリーに支配されていれば、漫画のストーリーが入り込む余地はないのですから」とのメッセージが印象深い。

 取材場所に指定した東京・吉祥寺の行きつけのホテルは間もなく閉館し、リニューアルされた。きっと楳図さんも生まれ変わったら、再び漫画を描いてくれるに違いない。

(今泉恵孝/日刊ゲンダイ)

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