橋本環奈からヒロイン感が伝わってこない…「おむすび」は“多くの人に分かってもらえる作品”になっているか
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月7日 9時26分
橋本環奈(C)日刊ゲンダイ
【芸能界クロスロード】
朝ドラ「おむすび」の視聴率が12%台まで落ち「危険水域」の2桁割れも現実味を帯びてきた。
コンスタントに15%台をキープしていた前作の「虎に翼」の後ということもあり、比較されるが、故・野村監督の野球哲学「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の名言に例えれば、視聴率低迷には必ず原因がある。
「虎に翼」はヒロイン・伊藤沙莉の卓越した演技力と、個性豊かな脇役の面々が揃い、どこを切り取っても印象に残るシーンばかりだった。
一方、「おむすび」は物足りなさからのスタートだった。現代を舞台に“ギャル”が前半の中心だったが、「民放のドラマみたい」と違和感を持った人も少なくない。
ヒロインは橋本環奈。福岡で芸能活動中、ファンが撮った写真が「奇跡の一枚」と呼ばれ全国人気になったシンデレラ。女優に軸足を移して10年の橋本と、子役から鍛錬された伊藤と比較するのは酷だが、いまだにヒロイン感が伝わってこない。実際、始まって1週間は姉で伝説のギャルだった仲里依紗を写真で見せるなど視聴者に期待感を持たせる演出だった。
橋本のヒロインの弱さを物語るようにも見えた。満を持して仲が登場すると、ヒロインが逆転したようにネットもざわついた。
脇役も前回に比べ地味。従来の朝ドラは回を追うごとに脇役が注目を増し、視聴率アップにつながった。今回は脇役で話題になる人物がほとんどいない。「あまり脇が目立つとヒロインの存在感が薄れる」という見方もある。「朝ドラのヒロインはまだ早かったのでは」という声も上がるが、今回の橋本の朝ドラ起用の経緯は従来の形と違っていた。朝ドラは作品に合わせオーディションでヒロインを決めることが多い。
「おむすび」はオーディションを行わずNHKから直接、橋本にオファーした。かつて、民放が初めて橋本をドラマに起用した際、「かわいい」とビジュアル人気を優先していたように、NHKも橋本人気に重きを置いていた。用意されたオリジナル作品は舞台も橋本の出身地、福岡(糸島)。そこにはNHKの思惑も透けて見えていた。
「これまでの朝ドラの高視聴率を支えたのは全国の中高年。紅白同様、朝ドラも若い人は関心が薄い。若者人気の高い橋本で若い人に見てもらうためでは」(テレビ関係者)
主題歌も若者に人気のB'zを起用。どんな曲を用意するか関心は高かったが、中高年の朝ドラファンにはまだしっくり馴染んでいない。朝ドラのテーマ曲は歌詞とドラマの内容がリンクする。相乗効果でドラマ・歌のヒットにつながる。最近ではAIが歌った「カムカムエヴリバディ」。「らんまん」ではあいみょんのメリハリの利いた歌声が朝から元気を与えた。「虎に翼」は米津玄師を起用。“空につばを吐く”など米津ワールドの歌詞が話題になった。
今回のB'zは「歌詞が聞き取りにくい」という声もある。肝心な歌詞とドラマのリンクができず「毎日聞いているのに頭に残らない」という。
桑田佳祐がテーマ曲を歌った2017年の「ひよっこ」では歌詞のテロップが入っていた。「おむすび」もテロップを入れるべきでは──。
亡くなった西田敏行は「多くの人に分かってもらえる作品をつくりたい」という姿勢を貫いていた。朝ドラも世代を意識せず大衆を意識すべきだろう。
(二田一比古/ジャーナリスト)
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