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《内川聖一の巻》球界屈指の好打者が尻込みしたブーイングの中でのヒーローインタビュー【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月7日 9時26分

《内川聖一の巻》球界屈指の好打者が尻込みしたブーイングの中でのヒーローインタビュー【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】

内川聖一(C)日刊ゲンダイ

【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】#25

 内川聖一

  ◇  ◇  ◇

 当時の日本球界を代表する安打製造機、それが内川聖一(42)です。

 打撃技術は言うまでもなく超一流。イベントで小学生から「どうしたら、そんなにヒットを打てるんですか」と聞かれ、「簡単ですよ。誰もいないところを狙って打てばいいんですよ」と、サラリと言ったものです。

 一塁に走者がいれば一、二塁間が空くーーなどは野球の常識ですが、内川はもっとレベルが高い。セオリーだけではなく、野手がどんなポジショニングをしているかを常に観察し、「じゃあ、ここに打とう」と決めて打席に入るそうです。もちろん、狙った箇所に打てる技術があってこそ、です。

 穏やかそうに見えて性格は気が荒く、打てば上機嫌ですが、打てないと、はたから見てそれとわかるほど不機嫌になる。昔はこうしたタイプの選手は珍しくなかったのですが……。でも、2015年にキャプテンに就任し、「常に人に見られる」という意識が芽生えてからは、徐々に落ち着きが出てきました。キャプテン制はこの年に就任した工藤監督の肝いり。ただ、選手に通達する前にメディアにかぎつけられ、僕の元に記者から「書きますよ」と連絡があった。

 僕は記者に頼んで、何とか1日だけ記事を出すのを待ってもらい、オープン戦の最終戦終了後、その場にいる選手たちに工藤監督が「今季は内川がキャプテンになる」と通達しました。「選手が知らない情報を、メディアを通じて初めて聞くのは良くない」というのが工藤監督の方針だったので、せめて一軍に帯同する選手たちに通達する時間をつくったわけです。

 秋山監督時代の2012年には、こんなこともありました。敵地での西武戦で、ホークスの投手が相手打者に頭部死球。試合には勝ったものの、ヒーローインタビューを受けた現監督の小久保は大ブーイングを浴びました。その翌日は内川の活躍で勝利となりましたが、試合終了後から、前日の怒りが冷めやらぬ西武ファンはブーイングの嵐でした。

 内川は「田尻さん、オレこんな中に出て行くの嫌だよ」とちゅうちょし、僕は「そう言うても今日はどう考えてもおまえしかおらんし……」と説得。そこに前日、大ブーイングを浴びた小久保が来て、「おう、行ってこい。長いプロ野球人生、こんなブーイングの中でヒーローインタビューを受ける機会なんてないぞ。記念や」とニッコリ笑顔。どんな投手も苦にしない内川も、ブーイングにはお手上げだったようです。

(田尻一郎/元ソフトバンクホークス広報)

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