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「晴海フラッグ」分譲完了でタワマンバブル狂騒の舞台は中古購入へ

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月7日 9時26分

「晴海フラッグ」分譲完了でタワマンバブル狂騒の舞台は中古購入へ

晴海フラッグ抽選に並ぶ人たち(提供写真)

【不動産業界 噂の現場】#1

「腹立つ、ほんと。年寄りが下町の一等地で庭いじりなんかして。あの土地にマンション建てりゃ、うちらくらいの世代が30世帯は住めるのに」

 マンション探し中の37歳の男性は、通勤途中にある古びた平屋を見ると、舌打ちしてしまうという。そして「早くバブルが崩壊しろ」とため息をつくのが最近の日課になりつつある。

 東京五輪選手村を改修、新たに2棟のタワマンを加えた大規模マンション群「晴海フラッグ」が、10月21日にあった抽選会で全物件の新規分譲を終えた。2019年から始まった4145戸(賃貸棟を含め総5632戸)の大売り出しは、コロナ禍での五輪延期を経て、5年にわたる異常な争奪戦となった。

 最終販売のタワマン2棟は最高が436倍で、過去に外れた人には2票の抽選権が与えられたものの、なお厳しい倍率となった。

 投資家の大量購入も話題になった。福岡に本社を置く投資会社は38戸を爆買い。大半を賃貸して家賃収益を得る戦略をサイトで披露している。こうした投資マネーで実需層の購入機会は大きく制限された。

 だが、自身も晴海フラッグに3室所有する投資家は「僕らにとっては、湾岸タワマンバブルはこれからが本番。割安の晴海フラッグが終わり、これから中古購入に人が流れるはず」と予想する。実際に相場は上昇中で、所有の部屋も売れば合計2億円近くの儲けになりそうだという。

 晴海を諦めた購入希望者らは、運河を挟んだ地区に建設中のザ・豊海タワーに目を向けるが、すでにモデルルームの予約すら困難な状況だ。40代の主婦は「1分単位で空き枠が消えてしまう」ため、アプリを使って自動で申し込みをするシステムまで作ったという。

 今年上半期に都心部の中古マンション価格は、昨年比14%も急騰している(東京カンテイ調べ)。狂騒の中、普通のサラリーマン家庭は厳しい選択を迫られている。都内の新築・築浅を諦め、千葉や埼玉へと目を向ける人々。あるいは築40年超の物件でリノベーションを探る層もいる。

 1000万円近い頭金を用意しながら、晴海フラッグの抽選に外れた東京・中央区の42歳会社員。夫婦年収800万円ほどで住宅ローンは7000万円が限度だ。通勤に便利な晴海・勝どき周辺は、標準の70平方メートルサイズのマンションが1億4000万円台で、もう手が届かない。「5歳の娘の入学までには購入したい。遅れれば、もっと価格が上がる。家族のことよりマンション相場が気になる毎日で、妻とのケンカも増えた」という。

 秋の夕暮れに、タワマンからは長い影が差している。貧富の境界線のように街を分けているようにも見える。

(小野悠史/ニュースライター)

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