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長寿研究のいまを知る(9)長寿におけるmTOR阻害薬とカロリー制限の関係

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月7日 9時26分

 問題は、いつでもどこでも食べ物が手に入る現代において、ヒトが生涯にわたってカロリー制限を続けることは困難だということ。スーパーでのおやつや冷蔵庫のなかのアイスクリームからの誘惑を断ち切るには強い意志が必要だ。

 そのため、カロリー制限の影響は短期的な研究とごく少数の経験談でしか語れないのが現状となっている。

 そんななか、最近はカロリー制限をずっと続けなくても短期間で繰り返すことでかなりの効果が得られることがわかっている。

「一定時間だけ体を飢餓状態にすることを繰り返す間欠断食が寿命の延長に効果があることがわかりつつあります。間欠断食の方法はさまざまで、1日の食事を8時間以内で取り、残り時間は何も食べない、という方法もあれば、1週間のうち2日はカロリー制限して残りの日数は普通に食べるなどがあります。ある研究では参加者に対して1カ月のうち5日はカロリー制限して残りの日数は普通に食べさせる生活を続けたところ、始めて3カ月で体重、体脂肪、血圧などが低下しました」(根来医師)

 このときとくに注目されたのはIGF-1(インスリン様成長因子-1)の濃度が低下したこと。

 IGF-1はインスリンによく似た化学構造を持つ成長ホルモンの一種で、主に肝臓でつくられる。食べて栄養成分が血中に増加すると検知して各細胞を活性化させる働きがある。

「今までは老化はさまざまなシグナル伝達経路や転写因子などの制御システムが崩壊することで起きることがわかっています。間欠断食はこのIGF-1が関係するシグナル伝達回路に影響すると考えられています。断食中にIGF-1濃度が低下し、食べることを再開した後もその効果が続いていることは、間欠断食効果が続いている間は体内が飢餓状態になるシステムが稼働している可能性があると考えられます」

 IGF-1に関係する遺伝子に起きる変化は死亡率やさまざまな病気の罹患率を下げることが知られて、100歳以上が多い家系の女性のなかに多いことが報告されている。

 つまり、mTOR阻害薬にしろ、断食によるIGF-1への影響にしろ、細胞が栄養不足と認識させることが長寿につながるということのようだ。(つづく)

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