テレビで育ちテレビに憧れ…自然と備わったNON STYLE井上のポップな「大衆性」
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月10日 9時26分
「NON STYLE」の井上裕介(C)日刊ゲンダイ
【今週グサッときた名言珍言】
「一番の大スターは板東英二やから」
(井上裕介/テレビ東京系「あちこちオードリー」10月30日放送)
◇ ◇ ◇
NON STYLEほど対象的なコンビも珍しい。石田明は、現在は吉本の養成所NSCの講師を務めるなど、ストイックな漫才の求道師的なイメージがある。一方、井上裕介は、イジられキャラを引き受けながら、クイズ番組から恋愛リアリティーショーの司会まで幅広く活躍するテレビ芸人というイメージだ。
そもそも、石田は15歳の頃まで家にテレビがなく、初めて見た「娯楽」が劇場だった。だから、劇場でネタをやることに憧れて芸人になった。逆に井上は芸人を志すまで劇場に行ったことがなかった生粋のテレビっ子。「『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ系)に憧れてこの世界に入った」という井上が語った一言が今週の言葉だ。
井上は「お笑いはしんどい! お笑いは対価と合わへん」と「M-1」チャンピオンらしからぬことまで言うのだ。一方で、「漫才が嫌いとかじゃない」とも言っている。「今やらなきゃいけないことをやっているっていうだけで。テレビとか映像系って今しか出れない。50~60歳になった時に出れるかわかんないから。漫才は死ぬまでありますから」(日テレ系「内村てらす」16年2月18日)と。
石田も「悔しいのが、あいつ漫才向いてんねん。漫才うまいねん。だから腹立つんですよ。あいつじゃないとでけへん漫才いっぱいある」とプレーヤーとしての井上を高く評価している。
そんなNON STYLEは「女子中高生が選ぶ好きな芸人1位がNON STYLEなんですよ。嫌いな芸人の1位がNON STYLE・井上なんですよ」(フジテレビ系「ライオンのごきげんよう」15年2月12日)と、井上自身がネタにしているように若者に人気がある。
その人気を支えているのは、そのポップさだろう。それを生み出していたのが、井上の存在だ。ネタ作りは石田が担当しているが、その日どのネタをやるのかを決めるのは、基本的に井上の役割だ。自分で書いたネタは全部自分の子供。だから順番はつけられないからという理由でそうなったという。
「出来損ないの子もかわいいじゃないすか。お客さんに『おもんない』と思われてるネタほど、かわいかったりする。それをやりたくなっちゃうから、NON STYLEがポップな感じでずっといれんのは井上のおかげ」(「内村てらす」=前出)だと石田は言う。テレビで育ち、テレビに憧れた井上には、自然と“大衆性”が備わっていたに違いない。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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