令和時代の「根性」を考える…いまや痛みに耐えながらマウンドに立つのはナンセンス(持丸修一/専修大松戸 野球部監督)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月11日 9時26分
甲子園といえばハンカチ王子こと斎藤佑樹だが…(C)日刊ゲンダイ
【持丸修一 76歳名将の高校野球論】#50
先日、「新語・流行語大賞」の30候補が発表されました。
日々、さまざまな「新語」が生まれている一方、当然ながら「死語」も続々と積み重なっています。その死語に目を向けると、令和の時代になってからは「根性」という単語をめっきり聞かなくなったように感じます。今回はその根性について、私なりの考えを記します。
皆さんは「根性」と聞いて、どのようなイメージを持ちますか。いくつかの辞書を引くと、「物事をやり通す強い気力」などと書かれていて、ここまでは誰もが納得するでしょう。では、高校野球においての「根性」と言われると、選手のどんな姿を想像しますか。
例えば投手なら、コンディションに不安を抱えていても大事な試合であれば無理をしてでも登板する、球数を投げすぎてフラフラになっていてもマウンドに立ち続ける──そんな姿が浮かぶかもしれません。
いまだに甲子園のたび、スポーツ記事のタイトルには「〇球の熱投」「足がつっても完投」「後からケガが発覚」などの文言が躍ります。
勝てば官軍のように捉えられがちですが、本来のパフォーマンスを発揮できずに試合を落としたら、チームのためだったと言えるのか。無理をした結果、本人の選手生命に影響したら元も子もありません。
時代は令和です。高校野球には球数制限が設けられ、投手起用も継投がセオリーになりました。もはやこれまで通りの「根性」という認識を改める時が来ているのではないでしょうか。
それでは「令和の根性」とは何か。「挑戦するために奮い立つ性根」だけではなく、「欲求を我慢する性根」であると考えます。
高校生はまだ後先を見通す想像力が発達途上のため、ケガをしていても試合に出たいなどという気持ちが強く表れてしまうもの。彼らにとっては「一生に一度」という思いが焦りをかき立てるのでしょう。そんな気持ちをグッと押し込めて我慢することも、「根性」であるはずです。
指導者は選手の精神を育み、我慢できるような態勢を整えなくてはいけません。投手なら1人エースではなく、代わりになれるような選手を育成したり、控えに回ることになった選手にその時できることを指し示し、本人を納得させて、次に向けて牙を研がせてやる。それが本人だけでなく、チームのためにもつながるのです。
昭和や平成の「スポ根」からの脱却は私のひとつのテーマです。
(持丸修一/専修大松戸 野球部監督)
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