日本の薬は大丈夫か?(1)ジェネリックの「原薬」「原料」の大半は輸入に頼っている
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月12日 9時26分
大半が輸入で賄われている
業界再編が成功したとしても、それだけではジェネリック不足を解消できません。なぜなら日本のジェネリックの「原薬」や「原料」は、大半が輸入で賄われているからです。
原薬とは有効成分のこと。原料はより単純な化学物質で、そこから何回かの化学反応を経て原薬が合成されます。日本はそれらの多くを、海外からの輸入に頼っています。ジェネリックメーカーの主な仕事は、輸入した原薬に、添加物などを加えて、最終製品である錠剤やカプセルに仕上げることです。
先発薬では、製薬会社は有効成分だけでなく、その製造方法まで特許を取っています。ノウハウの流出を嫌って、自社製造が基本になっています。
原薬には輸入した後、精製・加工しないと使えない粗製品と、そのまま使用できる精製品とがあります。金額ベースで見ると、粗製品は中国がトップ(63.1%)、次いでインド(20.9%)、韓国(8.9%)などとなっています。
精製品では、やはり中国がトップ(25.3%)、次いでイタリア(16.6%)、韓国(14.7%)、インド(13.8%)の順です。(日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会、2023年から)。
粗製品も精製品も中国への依存が強いので、外交的にこじれると、最悪は輸入がストップする事態も想定されます。少し大袈裟に言えば、日本のジェネリック業界、ひいてはわれわれの健康医療は、中国に首根っこをつかまれているわけです。
それについては日本政府も認識しており、主なジェネリックの原薬を「特定重要物資」に指定し、また多少の対策を実施しています。たとえば国内メーカーと協力して、いくつかの原薬の国産化を探っています。しかし本当に国産化するとなれば、輸入品と比べて2倍から5倍以上もコストがかかるともいわれています。現行の薬価では到底ペイしません。
一方、輸入原薬のなかには、粗製品を越して「粗悪品」と呼ぶべきものが多く含まれているともいわれています。
ただしメーカーにとって、きわめて重要な情報なので、ほとんど表に出てくることはありません。もちろんメーカー側は、うまく精製加工して、国の基準の品質を保っているはずです。あまり心配し過ぎるのもよくないでしょう。
ただ、日本だけで高品質のジェネリックを安く、しかも安定的に供給し続けるのは、ほぼ無理だということは、覚えておいてよさそうです。
(永田宏/長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授)
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