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帰り道がわからない…認知症やその疑いがある行方不明者は2万人弱【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月13日 9時26分

帰り道がわからない…認知症やその疑いがある行方不明者は2万人弱【老親・家族 在宅での看取り方】

在宅医療の患者さんは認知症を患う高齢の方も(C)日刊ゲンダイ

【老親・家族 在宅での看取り方】#119

「昨日の夜、おひとりで外を徘徊して、多分自分の家がわからなくなったからだと思うんですが、ご近所のおうちのインターホンを押したり、玄関ドアを叩いていたりしたようです」

 ある日のこと、認知症を患う患者さんの徘徊に関する報告をケアマネジャーさんからいただきました。

 自宅のアパート前に座り込んでいたところを、通報を受けて駆けつけた警察に保護。後見人の税理士の先生に相談して急きょ、翌日からショートステイに行くことになったといいます。

 在宅医療を行っている患者さんの中には、認知症を患う高齢の方が少なくありません。

 この病気は認知機能の障害によりさまざまな症状を生じさせます。

 例えばご自身がいる場所や日付、親しいはずの人の名前などがわからなくなる「見当識障害」。自分の持ち物や場所を捜しているうちに途中から自分が何を捜していたかがわからなくなる「記憶障害」。そして昔の生活をしているつもりで勘違いして出歩いてしまういわゆる「誤認」など。

 中でもこの「誤認」のように徘徊したり興奮して歩き回ったりする症状は、物忘れよりも家族をはじめ周囲の人を困らせることになり、より深刻だといえます。

 このような認知症患者さんにみられる症状全般を医学的にはBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼び、日本語では「認知症の周辺症状」と訳されています。

 この症状の中には徘徊、攻撃的行動などの異常行動、うつ状態、不安、幻覚・妄想、睡眠障害など、さまざまな症状が含まれています。

 ただしこれらの症状は、術後や入退院といった環境変化などによって急性に発症するが、その原因が除去されれば改善する、という一過性の「せん妄」とは明らかに異なるものです。

 対策としては、まずお薬の調整などもありますが、それでも徘徊などによる失踪を防ぐために、最近ではテクノロジーを使った見守りサービスや、靴の中にGPSを装着する商品などもあります。

 冒頭の患者さんは50代の息子さんがおり、頻繁に交流していないものの、金銭的には支えるというスタンスだったため、徘徊後はすぐにショートステイに入居することができました。

 後日ケアマネジャーさんにショートステイ先での様子を伺うと、「施設の中でも夜中歩き回っていたそうですが、それでも施設になじめる性格のようなので、今後は後見人の先生に相談し有料老人ホームに入るほうがいいねとなりました」と、より確かな人の見守りのある施設を選ばれたとの報告を頂いたのでした。

 2023年に全国の警察に届け出があった認知症やその疑いがある行方不明者が延べにして1万9039人にのぼるといいます。

 今後ますます増えるであろう高齢者の認知症患者の対策に、在宅医療は病院とはまた違ったアプローチとサポートが期待されていくものと考えています。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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