ドラマ、映画、音楽…令和6年エンタメ界のキーワードは「昭和」だった
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月14日 9時26分
中森明菜(C)日刊ゲンダイ
【芸能界クロスロード】
今年の1月期ドラマ「不適切にもほどがある!」が大きな話題を呼んだ。昭和のパワハラ・セクハラシーンが出てくるたびに「いい時代だったな」と懐かしむ高齢者。令和の今なら即座に「アウト」と昭和の実態に驚く若者たち。
映画界でも、2月公開のムロツヨシ主演「身代わり忠臣蔵」を皮切りに現在、公開中の「八犬伝」「十一人の賊軍」まで今年、時代劇は多数公開された。この中には8月に1館での公開だった「侍タイムスリッパー」は口コミで広がり全国の映画館に拡大し、異例のヒットを続けている。米国では真田広之主演・プロデュースの配信ドラマ「将軍」がエミー賞を受賞。年明けには大泉洋の「室町無頼」も公開される。にわかに昭和の時代劇ブーム再来を思わせる現象が起きている。
最近のテレビ界でも、目につくのがバラエティー番組の企画で昭和にはやった歌が映像と共に取り上げられる。なかでも欠かせないのが中森明菜(写真)だ。
「昭和を代表するポップス歌手の第一人者。テレビに出なくなったこともあり、明菜の映像は見る人の心を揺さぶっている」(テレビ関係者)
ヒット曲ごとに変わる衣装、髪形、振り付けは今見ても新鮮に映る。明菜が表舞台から遠ざかっていることで、改めて魅力が再発見されている向きもあるが、明菜の関心度は高まる一方だ。明菜人気にあやかるようにNHKは全盛期のコンサートや、他の歌手が明菜の曲をカバーする番組を放送している。一説には「紅白」出場への伏線とみる声もあるが、生番組での出場のハードルは依然と高い。
異例のヒットを続ける映画「室井慎次 敗れざる者」も昭和テイストたっぷりのフジ制作のドラマだった。15日には後編の「生き続ける者」が公開される。フジは「再び踊る大捜査線を考えている」という話も囁かれている。今年のエンタメ界のキーワードは昭和。
逆に昭和に戻れないのが芸能メディア。
先日、嵐の二宮和也が家族とのプライベートを“盗撮された”ことを、雑誌名は伏せ、自身のXで〈今回の事に関しては到底理解出来るものではありません〉と投稿。さらに〈環境や理由がどうあれ一般人である家族は写すのだけはやめてください〉と厳重抗議した。以前、有吉弘行も週刊誌に家族の写真を撮られ、〈どうか家族の盗撮はやめてください〉とXに投稿したこともあった。
3年前にも福山雅治が妻・吹石一恵と子供の写真を掲載され、ラジオで「黙っていることはできない」と怒りを爆発させたことがあった。
家族写真は昭和の週刊誌に欠かせないコンテンツだった。出産すれば、「1カ月経ったら公園デビュー」と住まい近くの公園で母子のツーショットを狙った。七五三、運動会もしかり。そんな自由競争のメディアに待ったをかけたのが故・樹木希林だった。樹木が娘と散歩する写真を撮り掲載した女性誌を、「娘が誘拐されたら、週刊誌はどう責任を取るの」と会見の場で強い口調で言うと、メディアは静まり返った。
以後、メディアは自粛傾向にあったが、再び昭和を復活させても家族写真はすでにオワコンか。良きも悪しきも活気のあった昭和の芸能界。エンタメ界は昭和をどう取捨選択するかが今後の課題だ。
換算すると来年で昭和100年を迎える。
(二田一比古/ジャーナリスト)
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