「南の島」「座らない」「催眠術」 高倉健さん没後10年…数々の“不器用伝説”の真相に迫る(金澤誠/映画ライター)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月15日 9時26分
高倉健(C)共同通信社
11月10日、没後10年を迎えた高倉健。映画やCMのイメージから“不器用、寡黙、孤高の人”といった印象が強いスターだが、その伝説はどこまで本当なのだろうか。「鉄道員(ぽっぽや)」(1999年)や「ホタル」(2001年)の現場に密着し、その後も彼に取材してきた私の経験から伝説の真相に迫ってみよう。
高倉健の伝説に「映画の初日舞台挨拶に、姿を現さない」というのがある。「鉄道員」のプロデューサーを務め、「新・網走番外地」シリーズ(1968~72年)などの製作担当や「ゴルゴ13」(1973年)、「新幹線大爆破」(1975年)もプロデュースした故・坂上順から聞いた話だが、これは本当。坂上によれば、「新幹線大爆破」の初日に渋谷東映で行われた舞台挨拶に、無理を言って高倉健に来てもらったら、お客の入りが悪くて、「健さんには本当に申し訳ないことをした」と思ったという。以来、高倉健はどの主演映画でも初日舞台挨拶に出席したことはなかった。「新幹線大爆破」は、別の役をオファーされたのに高倉が自ら買って出て新幹線に爆弾を仕掛ける犯人を演じた作品で、そのアンチヒーロー的なキャラクターに手ごたえを感じていたので、初日のお客の入りが気になったのだろう。
またそこから映画人の中で、別の伝説も生まれた。「健さんは映画の初日、南の島で過ごしている」というもの。これは確証がないが、ひとつの映画の撮影が終わると、自分の中から演じた役を抜くために、旅に出ることが多かった高倉だけに、どこか旅の空で映画の初日を迎えていたことは想像がつく。
「撮影現場では、絶対に座らない」という伝説もある。いやこれは、ビートたけしをはじめ、多くの共演者が証言してるので、もはや伝説ではなく事実。私も「鉄道員」の現場で目撃したが、撮影するスタジオの中には高倉専用の椅子がいつも用意されているのだが、それに座ったことは一度もない。彼の場合、その日に撮る簡単な芝居の流れを決めたら大体が一発本番で、よほどのことがない限り2度同じシーンをやることがない。一回の芝居に気を込めようと現場に入ってくるので、椅子に座って休憩することがないのである。ちょっと気を抜いて演じられる和やかなシーンを撮る日でも、現場のスタッフと笑いを交えて話しながら、いつも現場では立っている。一度の芝居に懸ける意気込みが、そこには表れているのだ。
「高倉健は、催眠術が得意」という伝説もある。これは高倉本人から聞いたことだが、昔ある撮影で休憩中、スタッフに催眠術をかけて、本番が始まったときに高倉が合図を送ると、そのスタッフがとんでもない行動に出たことがあったという。それは現場の雰囲気を和ませるためのちょっとしたいたずらで、スタッフたちもそんな高倉の人柄を愛した。彼によれば、「自分の催眠術の先生は、丹波哲郎さんなんだよ」と言っていた。
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