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《摂津正の巻》監督とコーチの意見が対立した先発転向…突然水を向けられて、たまったものじゃなかった【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月16日 9時26分

《摂津正の巻》監督とコーチの意見が対立した先発転向…突然水を向けられて、たまったものじゃなかった【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】

摂津正(C)日刊ゲンダイ

【ホークス一筋37年 元名物広報が見た「鷹の真実」】#29

 摂津正

  ◇  ◇  ◇

 先発からリリーフに転向して成功する投手はそれなりにいますが、逆はなかなか難しい。それを成し遂げたのが摂津正(42)です。

 1年目の2009年から70、71試合に登板し、2年連続で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。先発転向1年目の11年にいきなり14勝(8敗)を挙げると、12年は17勝(5敗)で最多勝と最優秀投手、沢村賞のタイトルを手にしました。

 ただ、先発転向はすんなり決まったわけではありません。当時、摂津は腰を痛めていたこともあり、毎日ブルペンで投球練習をする中継ぎは負担が大きい。そこで高山郁夫投手コーチが先発に回すことを進言しました。

 一方、秋山幸二監督は先発転向に反対。監督は戦力をやりくりしてチームを勝利に導くことが役目です。すでに中継ぎとして実績のある摂津の配置を動かしたくなかった。

 どちらも正論だからこそ、なかなか意見がまとまらない。秋山監督が「先発なら、誰か他に出てくるんじゃないか」と言えば、高山コーチは「そうそう出てきませんよ」と言う。僕がたまたま監督室にいたある時、2人が摂津の起用について話し始め、「一郎、おまえはどう思う?」と聞かれたものだから、たまったものじゃありません。

「おふたりの意見を聞いて、秋山さんの考えもわかりますし、高山さんの思いもわかります。ただ、あくまで一個人の意見で言うなら……先発ですかね」

 と、何とか言葉を絞り出しました。

 摂津の活躍で、他球団のスカウトから感謝されたこともありました。摂津がプロ入りしたのは26歳。秋田経済法科大付高(現ノースアジア大明桜高)からJR東日本東北に入社し、8年間プレー。こうした選手がプロで活躍したことで、「これまでは年齢がそれなりの選手は球団に推薦しにくかったんですが、摂津のおかげで変わりました」と、ドラフトにも影響を与えました。

 なにより、摂津が凄いのは、26歳でも「プロでやりたい」という気持ちを持ち続けられたことです。

 普通、社会人の選手は24歳くらいまでに指名がなければ、「もうプロは諦めよう」となるものです。そのあたりは摂津の根性と自信でしょう。

 僕と高校野球の話をしている時、「昔は理不尽な練習とかあったなあ」と話題になりました。すると摂津は「今の子は『なんでこの練習を?』とか、言いますからね。でも、僕はそれは違うと思う。僕は理不尽と思ってもやってきたんで、野球についてはそれなりの自負がありますから」と言ったものです。

(田尻一郎/元ソフトバンクホークス広報)

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