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前立腺肥大症には「髪の毛が増える」副作用があるタイプも【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月16日 9時26分

前立腺肥大症には「髪の毛が増える」副作用があるタイプも【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

「髪が増える」のは副作用

【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

「前立腺肥大症」に用いられるクスリには大きく分けて3種類あります。今回はまず「ホスホジエステラーゼ5阻害薬」を取り上げます。

 体内には一酸化窒素が存在し、前立腺や尿道の筋肉(平滑筋)を弛緩させる働きを持っています。ところが、この一酸化窒素は体内でホスホジエステラーゼ5という酵素によって分解され、効果を失ってしまいます。ホスホジエステラーゼ5阻害薬はこの酵素の働きを止めることで一酸化窒素の分解を抑制し、一酸化窒素の作用を強めて前立腺や尿道の平滑筋を緩め、症状を改善します。

 じつは、この一酸化窒素についても当連載で以前に触れていて、狭心症の発作時に用いられるニトログリセリンを取り上げたときにお話ししました。ニトログリセリンは血管内に入ると一酸化窒素という物質に変わります。一酸化窒素は血管を広げる作用を持っていて、それにより心臓の血流を良くして狭心症の発作を改善します。

 ニトログリセリンが直接、一酸化窒素に変わるのに対して、ホスホジエステラーゼ5阻害薬は一酸化窒素の分解を抑制するという点は異なりますが、結果として同じ一酸化窒素が効果を発揮するというのは興味深いですね。

 最後に紹介するのは「5α-還元酵素阻害薬」です。このクスリについても、AGA治療薬を取り上げた回で触れています。

 男性ホルモンであるテストステロンからジヒドロテストステロンが生成される際には、5α-還元酵素というものが関係しています。ジヒドロテストステロンは男性外生殖器の形成に必要なホルモンなのですが、前立腺の肥大にも関与しています。5α-還元酵素阻害薬はその名の通り5α-還元酵素の働きを抑制することで、テストステロンからジヒドロテストステロンがあまり産生されないようにして、前立腺が肥大しないようにするクスリです。

 もちろん前立腺を小さくする効果もあり、それによって前立腺肥大による症状を改善します。ですから、5α-還元酵素阻害薬はこれまでに紹介したα1受容体遮断薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬と異なり、前立腺肥大の原因そのものをターゲットにしたクスリなのです。

 5α-還元酵素阻害薬の副作用としては性欲減退や精液量減少が挙げられますが、「髪の毛が増える」というものもあります。ジヒドロテストステロンは毛髪のもとである毛母細胞の働きを低下させてしまうため、5α-還元酵素阻害薬を使用するとその影響を抑えることができるのです。髪の毛が増えることは副作用なのか効果なのかわからなくなってきますが、前立腺肥大症の治療に用いられる際にはあくまで「副作用」になります。

 いずれにしても、決められた用法用量をしっかり守って使用しましょう。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)

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