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大腸がん…遺伝が影響「する」、「しない」ケースの注意点【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月16日 9時26分

大腸がん…遺伝が影響「する」、「しない」ケースの注意点【中川恵一 がんサバイバーの知恵】

阪神タイガースの原口文仁選手(C)日刊ゲンダイ

【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】

 プロ野球・阪神タイガースの原口文仁選手(32)が国内FA権を行使するそうです。活躍の場を求めて新天地を目指すのはプロ選手なら当然。ぜひとも頑張ってほしいと思いますし、がんサバイバーとしても大注目です。

 原口選手は18年に大腸がんと診断され、翌19年1月、手術で切除。術後は一軍に復帰して試合に出場しながら抗がん剤治療を受けたことが大きな話題となりました。治療から5年。がん治療では、転移や再発がなければ完治とみなす節目の年を迎え、人生の転機にもなっています。

 さて、大腸がんはメタボを招くような生活習慣との結びつきが強く、メタボ化傾向が強まる今、患者数が増加傾向です。運動不足や高脂肪食、低繊維食などを続けると、大腸の粘膜に遺伝子異常が生じて発症すると考えられています。全体の70%程度はこのタイプで、一般に散発性大腸がんといいます。

 一方、少ないながらも遺伝が影響するタイプもあって、それが遺伝性大腸がんです。原因となる遺伝子異常が家族間で共有されるため、親や兄弟姉妹、おじおばなど血縁者に高頻度で発生しやすくなります。大腸がん全体の5%程度です。若くして発症するのも特徴ですから、26歳で発症した原口さんもこのタイプかもしれません。

 発がんに関係する遺伝子はいくつかあり、遺伝性大腸がんではがんを抑える働きをする遺伝子の異常が重要です。いわばがんのブレーキ役を両親から1つずつ受け継ぎ、大腸粘膜で2つともブレーキが壊れると、発がんに進むイメージです。

 ブレーキの“故障”は大腸粘膜に限ったことではありません。ほかの細胞でも生じているので、遺伝性大腸がんの場合、ほかの臓器でもがんを発症しやすいと考えられています。特に乳がんや卵巣がん、膵臓がんなどは要注意です。

 ただし、家族に複数の大腸がんの方がいても、原因となる遺伝子異常との関係が不明なケースもあって、これは家族性大腸がんと呼ばれ、全体の2~3割を占めます。

 原口さんは疲労感が抜けないことが気になって人間ドックで大腸内視鏡検査を受けて、診断がついたといいます。そのときステージ3b。病巣近くのリンパ節に4個以上または病巣から離れたリンパ節に1個転移がある状態ですが、離れた臓器への転移はありません。遠隔臓器への転移がなかったことは、とてもよかったと思います。

 症状があったことでギリギリのタイミングで発見できましたが、がんを早期に発見するという点では症状を頼りにすることはよくありません。大腸がんの予防や早期発見のためには毎年、必ず便潜血検査を受けながら、メタボ的な生活を改めることが大切です。

(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)

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