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藤井健太郎演出アマプラ「KILLAH KUTS」が物議…バラエティー界の先頭を走るテレビ局社員の戦い(鈴木旭/お笑い研究家)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月19日 9時26分

藤井健太郎演出アマプラ「KILLAH KUTS」が物議…バラエティー界の先頭を走るテレビ局社員の戦い(鈴木旭/お笑い研究家)

バナナマン設楽統と伊集院光(C)日刊ゲンダイ

「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の演出を手掛ける藤井健太郎氏の新番組「KILLAH KUTS」(Amazon Prime Video)が話題となったのは記憶に新しい。10月7日配信スタートの予定が、直前で延期となり同月14日から開始に。詳しい理由は明かされていないが、本編を見る限り企画にまつわる問題だっただろうことが想像される。

 芸人同士がスタンガンで勝負する「スポーツスタンガン」、誰かに殺されてメッセージを書き残すシーンを麻酔で再現する「麻酔ダイイングメッセージ」、街中を歩く人の政治信条が「右」か「左」かで進行方向を決定する「右翼左翼レース」、男性8人の中から童貞を当てる「童貞人狼」と全4エピソードは、どれも刺激的な企画ばかりだ。

 特に「麻酔ダイイングメッセージ」は、MCの伊集院光が「(制作チームの)頭がおかしい」と口にするほどインパクトが強かった。挑戦したのはモグライダー、ラランド、みなみかわ&お見送り芸人しんいちの3組。1人(ともしげ、ニシダ、みなみかわ)が麻酔の効果が現れる1分ほどの間に自分を刺した犯人の特徴を紙に書き残し、もう1人がその文字から推理して犯人を言い当てるというものだ。

■会社員だからこそのフルスイング

 麻酔で筆がおぼつかなくなり、ろれつが回らなくなっていく3人の姿には生々しいものがあった。医療関係者や視聴者に配慮し、収録と併せて“胃カメラ検査を行う段取り”ではあったものの、日本麻酔科学会が「麻酔薬の安全な使用に対する信頼を損なう」などと番組を非難する事態に。配信が始まって間もなく賛否を呼ぶこととなった。

 これまでも藤井氏は、「水ダウ」の企画でたびたび物議を醸している。「なるべく面白くて、なるべく見たことのない」企画・番組を目指す中で、一定数から批判を受けるのは仕方がない。そんなスタンスを貫き、長らくバラエティーのトップを走ってきた。

 一方で、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系)のエンディング曲をプロデュースし、音楽イベント「STILL MORE BOUNCE」を主催し、「大脱出」シリーズや「鬼のドッキリで涙」(ともにDMM TV)といった配信番組を制作するなど、テレビ局員とは思えないほど幅広い活躍を見せている。

 それもこれも藤井氏に言わせれば筋が通った話だ。著書「悪意とこだわりの演出術」(双葉社)の中で「会社員のエセクリエイターだからこそ、小さくまとまらずに思いっきりフルスイングしなくちゃいけないはず」と書いている。2年前、筆者がインタビューした折にも、旺盛な好奇心とロジカルさの両方を感じる発言が多かった。

 守られた立場ゆえに、失敗を恐れず突き進む。批判の声が出るのは、藤井氏が現在も戦い続けていることの証しではないだろうか。

(お笑い研究家・鈴木旭)

  ◇  ◇  ◇

 今回記事に登場した藤井健太郎氏は、「水曜日のダウンタウン」の「清春の新曲、歌詞を全て書き起こせるまで脱出できない生活」の演出を務めたことでも知られている。

関連記事【もっと読む】「水ダウ」企画力冴える清春回…お笑いバラエティーで“脱出企画”が好評のワケと今後注目の番組は?…では、藤井氏の「バランス感覚」の鋭敏さに触れている。

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