中国で相次ぐ無差別殺傷事件の背景に国内経済の悪化が? 外務省の元アジア大洋州局長も指摘
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月20日 9時26分
切り付け事件があった専門学校前=中国江蘇省無錫市宜興(C)共同通信社
中国・江蘇省無錫市の専門学校で同校に通っていた男(21)が16日、無差別に刃物で居合わせた人らを切りつけ、17人が負傷、8人が死亡する事件が起きた。中国では11日にも広東省珠海市で車に乗った男が暴走、35人が死亡する事件が起きたばかりだ。
「無錫市で切りつけ事件を起こした男は犯行後に現場で拘束されましたが、SNSに出回った男のものとみられる文章には、実習先の工場で1日16時間働いても給料が支払われなかったことについて触れ、『搾取を目の当たりにした。死をもって労働法を改善させる』などと、自身が置かれた境遇や社会への不満がつづられていました」(外信部記者)
この事件の5日前に起きた車の暴走事件で逮捕された男は離婚後の財産分与に不満を抱えており、両事件とも背景には経済的な困窮が関係しているとみられている。
「そのほか、今年6月には江蘇省蘇州で日本人母子が切りつけられ負傷し、9月には広東省深圳で日本人男児が刺殺される事件も起きています」(同前)
このような凶悪な無差別殺傷事件が相次ぐ背景について「あくまでも一般論としてですが」と前置きしつつ、外務省の元アジア大洋州局長の薮中三十二氏が次のように語る。
「現在の中国は不動産バブルがはじけ、アリババなどこれまで中国の牽引役だった企業に(市場の地位を乱用したとして)共産党からの規制が入り、海外からの投資が逃げてしまいました。年間1000万人が大学を卒業しても20%しか就職できないといわれていましたが、今ではそれ以上と思われます。そうした経済的、社会的な不安要素が一連の事件に結びついている可能性が考えられます」
中国政府側もそのような「人民らの不安要素を重々承知している」と薮中三十二氏は続ける。
「中国は経済の立て直しに必死になっていますが、アメリカからは半導体などに対する相当厳しい制裁を受けています。それに、トランプ前大統領の復帰により、米中関係においての不確定要素はますます高まっている。経済を立て直し、人々の根本的な生活面が改善されない限り、今後もこのようなこと(事件)が起こり得るかもしれません」
トランプがますます中国を追い詰めるのか。
◇ ◇ ◇
トランプ次期米大統領の政権人事に内定している面々を見ると、ひと癖もふた癖もある人物ばかり。果たして空中分解せずに済むのかどうか。●関連記事『【もっと読む】気になる米トランプ新政権の行方…“スネ傷”の面々が続々と閣僚内定のトンデモ人事』で詳報している。
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