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違和感なく「芸人・松本人志」が受け入れられる復帰へのハードルは依然として高い

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月21日 9時26分

違和感なく「芸人・松本人志」が受け入れられる復帰へのハードルは依然として高い

松本人志(C)日刊ゲンダイ

【芸能界クロスロード】

 兵庫県知事選は斎藤元彦氏が他の候補者に大差をつけ圧勝。再び知事に返り咲いた。SNS効果などさまざまな角度から勝因を分析されているが、斎藤氏の変わらぬ毅然とした姿勢も大きかったと思う。昨年、部下へのパワハラなどを追及された斎藤氏。逃げも隠れもせずに連日メディアにマイクを向けられても表情を変えることなく自分の言葉で対応。百条委員会でも背筋を伸ばし正面を向き表情を変えることなく自身の見解を語った。選挙戦も一貫してその姿勢は変わらず、県民も徐々に斎藤氏を見る目が変わっていったという。旧知の県民も「悪いことをしそうもない爽やかなイケメン。主張もしっかりしているし、本人を信じたくなった」と一票を入れたそうだ。

 ダウンタウンの松本人志も兵庫県尼崎出身。

 今年1月、週刊文春が「複数の女性に対して性的関係を強要した」という報道に対して、松本はXで〈事実無根なので闘いまーす〉と宣言。芸能活動を休止して裁判で闘う決意を見せていた。この初期対応からして問題だった。斎藤氏のように堂々と会見で身の潔白を主張するわけではなかった。書面では真意が伝わらない。

「まーす」の表現も芸人とはいえ、裁判をちゃかしているように思えた。

 不安要素を抱えた裁判も次第に勢いは衰え、白黒の決着が出る前に自ら訴訟を取り下げた。和解と違い「なにもなかった」とする取り下げ。実質、白旗を揚げたに等しい。 

 実際、〈参加された女性の中で不快な思いをされたり、心を痛めた方々がいらっしゃったのであれば、率直にお詫び申し上げます〉と松本は声明を発表。初めてホテルのスイートルームでパーティーを開いていた事実を認めた。

 性加害疑惑報道時から指摘されていた問題点が後輩芸人にアテンドさせた女性との飲み会であるという点だ。古舘伊知郎も17日放送のワイドナショーで「遊び方がダメ。お店を貸し切りにして楽しめばいいじゃないですか」と厳しく語っていた。会見を開けない大きな理由も事の経緯を説明ができないことにある。事実無根なら斎藤氏のように堂々と会見を開き自分の言葉で話せばファンにも説明責任を果たせた。

 今回の取り下げは「早期復帰に向けて」ともいわれるが、「なにもなかったことにした」松本をテレビ局はすんなり受け入れるだろうか。

 芸能界は昔から良きにつけ悪しきにつけナアナアの関係といわれる。物事が寄り合い所帯のように口約束だけで決まることが少なくない。松本所属の吉本とテレビ局の関係も良好。「よろしく」の一声で復帰は決まりそうにも思えるが、番組に戻り事件には一切触れず笑いをやる。歌手や俳優ならそれも可能だろうが、おしゃべりがモットーの芸人。何事もなかったかのように出演すれば視聴者に違和感しか与えない。松本の復帰に難色を示すスポンサーも出てくるはず。忘れがちなのが、松本に女性をアテンドしたスピードワゴンの小沢一敬ら後輩芸人で、彼らもいまだに復帰のメドがついていない。彼らをほったらかしにして松本だけの復帰は非難を浴びる。彼らに対しても松本の責任が問われる。

 斎藤氏のように多くの人に支持されての復帰は難しくとも、せめて違和感なく「芸人・松本」が受け入れられる復帰を模索しなければならない。復帰へのハードルは依然高い。 

(二田一比古/ジャーナリスト)

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