いわき信組で現金着服事案2件発覚…金融当局がニラむ「175億円公的資金」返済計画(重道武司)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月21日 9時26分
迂回融資は江尻次郎氏ら当時の代表理事4人の合議で決めたという(C)共同通信社
【経済ニュースの核心】
金融当局内部では「青白い怒りの炎」(関係者)が広がっているらしい。福島県いわき市に本店を置く、いわき信用組合で多額の不正融資と、職員による2件の現金着服事案の隠蔽が発覚した。
旧経営陣らが市内の大口融資先の資金繰り支援や赤字補填などを目的に、この企業の役員らの家族名義の口座を経由する形で毎月のように「迂回融資」を繰り返していたというのが不正融資の実態。融資総額は判明している分だけで「10億円以上」(本多洋八理事長)にのぼっているという。
一方の着服事案は、ギャンブルなどの遊興費欲しさに当時、係長だった職員が4500万円、支店次長だった職員が20万円をそれぞれ懐に入れたというもの。
係長事案は役員らもそれを把握していながら金融庁に報告していなかった。また支店次長事案はそもそも支店から本店に事実関係が伝えられていなかった。
何やら地方の中小金融機関を舞台に「いかにも起こりそうな事件」(メガバンク筋)と言えなくもないが、当局がこれに神経をとがらせているのは、背景に公的資金の存在があるからだ。いわき信組には、東日本大震災後の地域の金融秩序の維持などを名目に175億円もの“血税”がつぎ込まれているのである。
無論、時系列的に見て一連の不祥事と公的資金の間に直接的なつながりはない。不正融資が始まったのは2008年から。着服事案の発生は09年と14年。これに対し公的資金注入は12年だ。
利益剰余金は43億円強
とはいえ不正融資は公的資金注入とほぼ平仄を合わせるようにぴたりと止まり、以後、封印され闇に葬られてきた。「大金が転がり込んでくるアテができたので、ひとまずヤバい案件から手を引いた」(地銀幹部)と受け止められなくもない。
公的資金の返済にメドが立っているのならまだ救われよう。しかしその可能性は「限りなくゼロに近い」(信組業界筋)。償還原資となる、いわき信組の利益剰余金は、今年3月末時点で43億円強にとどまっているからだ。
当初「22年まで」とされていた返済期限は、コロナ禍に配慮して「26年まで」に延長された。ただ、いわき信組の最終利益は24年3月期で2.14億円に過ぎない。残り2年ほどの間に剰余金を175億円にまで積み上げ、かつ返済後も財務の健全性を維持することなど無理スジとも言える芸当だろう。光明は見えていない。
(重道武司/経済ジャーナリスト)
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