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肉体労働者が足のケガを放置してはいけないのはなぜ?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月21日 9時26分

肉体労働者が足のケガを放置してはいけないのはなぜ?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

写真はイメージ

【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

 立ち仕事や力仕事が多い肉体労働者は、腰だけでなく足の不調を招きやすいのはご存じでしょうか。危険な作業を伴う建設業や製造業の方は安全靴の着用が義務付けられているケースが多く、足の形状に合わない靴を履きながら作業を行うことで、足に過度な負担がかかります。とりわけ長距離ドライバーの方は、長時間同じ姿勢で座り続けることにより下肢の血流が悪くなるだけでなく、ペダル操作に負荷がかかりやすいのです。

 トラックドライバーとして働く50代後半の男性は、繰り返しペダルを踏む動作によってアキレス腱部と足が酷使され、かかとの皮膚に大きな傷ができていました。傷が治りにくい難治性の「アキレス腱部潰瘍」の場合、入院して手術を行う必要があり、術後は足が動かないようギプスで固定します。傷を作るきっかけとなった動作を避けなければ、完治させるのは非常に難しい。その男性は約3カ月間休職し、現在も治療を継続されています。

 また、運送業や建築業などの肉体労働者は、多忙さから食事に充てられる時間が短く、短時間で食べられるサンドイッチやおにぎり、ハンバーガーといった炭水化物に偏りやすい。そういった食生活は糖尿病を招きやすく、知らぬ間に糖尿病が進行していると、最悪のケースでは足の切断を余儀なくされる恐れがあるのです。

 以前、糖尿病を患う70代前半の男性が、「足裏にできた胼胝(べんち=タコ)が痛くて歩けない」と受診されました。話を伺うと、定年退職後はオフィスビルの清掃スタッフとして働き、痛みをこらえながらなんとか業務を行われていたそうです。ですが、胼胝がある状態で歩き続けると胼胝の下に潰瘍ができ、万が一、壊疽を引き起こせば足の切断につながりかねません。潰瘍部位に圧がかからないよう「除圧サンダル」を着用し、それでも改善が乏しい場合には、下腿から足部にかけてギプスを巻き、足底にかかる荷重をなくす「TCC(トータルコンタクトキャスト)」を行います。先ほどの男性はTCCを約3週間継続したところ、潰瘍が完治し、現在は仕事にも復帰されています。

 足を痛めやすい職業の人ほど、日頃のフットケアを怠ってはいけません。足に傷ができていないか、変形していないか毎日観察し、小さな異常を見逃さないことが重要です。

(田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)

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