引退したナダルのパワーと闘志…「メンタルトレーニングをやっているか?」には驚きの回答も
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月23日 9時26分
現役最後の試合を終えたラファエル・ナダル(C)ロイター
男子テニスの国別対抗戦デ杯ファイナルズが進行中だ。
かつてのホーム・アウェー方式から変わって、今回は上位8カ国がスペイン南部のマラガに集結。優勝候補は新王者シナー率いるイタリアだが、最大の注目は地元の英雄ラファエル・ナダルだ。
ラファも既に38歳で、股関節の故障が回復せぬまま今季12勝7敗。パリ五輪のジョコビッチ戦を最後に出場はなく、デ杯ファイナルズでの現役引退を表明していた。デ杯での起用も危ぶまれたが、最初のシングルスに登場してストレート負け。往年の迫力はなかった。
ロジャー・フェデラーの技術がテニス通をうならせた一方で、ラファの躍動感は若者を引き付けた。通算22回のメジャー優勝、中でも全仏オープンは2005年の初出場から18年間に優勝が14回、通算112勝4敗の勝率97%……誰もが永遠不滅とする大記録を残した。
武器は強烈な左フォアハンドで、グリグリのトップスピンをバックサイドに弾ませて追い込み、フェデラーの不敗神話を崩した。2人の対戦成績はナダルの24勝16敗。1歳下のジョコビッチと29勝31敗と競り合いつつ史上最強の“3強時代”を築いた。錦織圭は2勝12敗、リオ五輪の3位決定戦で勝っている。
腕力もさることながら、ラファの強さは並々ならぬ闘志だった。デ杯代表としても貢献し、サッカー大国の母国を熱狂させた。スペインが初優勝した2000年に国旗係を務める14歳のラファの映像が残っているが、その4年後の04年、地元セビリアのサッカー場での米国との決勝で、世界2位だったロディックを3時間40分の激闘の末に倒した。史上最高、2万7000人の大興奮はテニス文化を変えたとさえ言われたものだ。コーチは叔父のトニー、もうひとりの叔父でスペイン代表にもなったFCバルセロナのミゲル・アンヘルにプロ精神を教わった。故郷のマジョルカ島から拠点を移さず、一貫したファミリーの結束でコマーシャリズムを回避、マイペースを維持したのが闘魂の土台であり成功の柱だった。
2度来日し「メンタルトレーニングをやっているか」という質問が出たことがある。通訳に何度も聞き直し、眉間にしわを寄せ、怪訝な顔をして答えた。
「メンタルはトレーニングするものじゃないよ」
かなわないと思った。
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