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ラジオはアナウンサーではなく「パーソナリティー」という立ち位置なら、と引き受けた【武内陶子「今があるのは…」】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月24日 9時26分

ラジオはアナウンサーではなく「パーソナリティー」という立ち位置なら、と引き受けた【武内陶子「今があるのは…」】

武内陶子さん(C)日刊ゲンダイ

【武内陶子「今があるのは…」】#12

 NHKラジオに移ったのは2019年。毎日3時間半しゃべりっ放しは無理だと思ったが、蓋を開けてみると……。

  ◇  ◇  ◇

 ラジオをやってほしいと、上司からある枠を提案された時は「毎日3時間半もしゃべり続けたら3日でネタが枯れる」と思いました。でも、上司は「どうしてもやってくれ」と。

 だったら、アナウンサーではなく、「パーソナリティー」という立ち位置でなら、と考え直しました。つまり、アナウンサーという立場ではできないと思ったんです。放送でパーソナルなことをしゃべると「アナウンサーなのに、なんで自分のことをしゃべるんだ!」と視聴者の中には違和感を持たれる方もあるように感じていたので。アナウンサーは余計なことは言わないというイメージなのでしょうね。

 でも、「スタジオパークからこんにちは」でインタビューしていた時も私がアナウンサーとしてではなく、ひとりの人間としてゲストの方の心に飛び込んでお聞きした瞬間に、「この話は初めてするけど」と心を許して話してくださることがあった。だから、ラジオでリスナーさんたちが自分の中の引き出しを開けて本音を投稿してくださり、それを受け止めるためには、私がまず自分のことを包み隠さずさらけ出すしかないと。それで「武内陶子のごごラジ!」「武内陶子のごごカフェ」と自身初の冠番組をやることになりました(後に「ごごカフェ」)。

 そしていざ始まったらまったくネタが尽きることなく(笑)、5年間で1日も話に困った日はありませんでした。例えば「引っ越し」というひとつのテーマでもリスナーさんの体験メールには何一つ同じ内容がない! こんなにさまざまな人生ドラマがあるんだと驚くばかり。

 私はそれをパーソナリティーとしてリスナーのみなさんとシェアし、「わかる、わかる!」と共感しつつ、自分の体験を話していく。そんな番組の作り方でした。たとえれば、私はパーソナリティーとして3時間半の縦糸を張り、そこにリスナーさんがどんどん横糸として入ってきて、毎日違う楽しい織物が出来上がっていくイメージ。

 テレビに出ていた時よりも不思議と街中で声をかけられる回数も増えたんですよ。住んでいるマンション内でも「いつも聴いてますよ!」と言われるようになりました。

 ラジオ人口は意外と多く、いつの時代もパーソナリティーとリスナーの関係は特別な濃さなのではないかと思います。その上、今のリスナーさんたちはSNSでつながったりして、オフ会を開いたり、仲よくなった人たちで連絡を取り合ったりしているようでした。

 ラジオは災害時には欠かせないメディアだと思いますし、今はインターネットラジオもあり、みなさん、スマホで聴いておられる。若い人たちも意外と注目していて、今こそ大切なメディアだと思います。

 また、リスナーさんと「お耳に」かかれるラジオ番組を持ってみたいです。

(武内陶子/フリーアナウンサー 構成=松野大介)

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