出生数70万人割れ…少子化に歯止めをかけるカギは「地方の若年女性」が握る 識者が指摘
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月26日 9時26分
写真はイメージ
「2030年代に入るまでのこれからの6~7年が、少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンス」。政府は昨年3月末、22年の出生数80万人割れの衝撃から「こども・子育て政策の強化について(試案)」でこう危機感を述べた。
厚生労働省が11月5日公表した人口動態統計(概数)によると今年上半期(1~6月)の日本人の子供の出生数は32万9998人と前年同期比6.3%の減。このペースで進むと今年1年間に生まれる日本人の子供は70万人を割り込む公算となる。100万人を割った16年からわずか8年余りで約30万人が減ったことになる。
政府は過去30年にわたり少子化対策に取り組んできた。「異次元の少子化対策」等の経済支援で出生率の引き上げを目指してきたが効果は上がらず、少子化は政府の予想を上回る加速度的なスピードで進んでいるのである。
人口動態統計を見ると少子化の大きな要因となる婚姻数は、47万4741組(11月公表23年確定値)と戦後初めて50万件を割り込んだ。人口戦略会議(議長三村明夫、副議長増田寛也)は今年4月に50年までに20~39歳の女性人口が半数以下になる自治体が全国744に上ると発表している。中央大学教授で内閣府男女共同参画会議専門委員の山田昌弘氏がこう述べる。
「結婚対象となる若年女性が毎年減少し続けているなかで1人の女性が産む子供の数が減り、その結果として人口減少に歯止めがかからないのは当然のことです。特に地方での若年女性の減少は甚だしい」
内閣府が昨年末に公表した都道府県別の未婚者(20~34歳)の男女比率(女性1に対する男性の数)を見ると、全国平均1.15(東京都1.04)に対し福島県1.35、富山県は1.32倍の差がある。30~34歳では福島県1.65、山形県1.54倍の差だ。内閣府は若年女性の流出が進む東北、北関東、甲信越は未婚男性の比率が高いと指摘する。未婚男女の人口に大きな差があれば、結婚、出産に当然大きく影響してくる。先の山田教授がこう指摘する。
「地方では女性の正社員は少ない。産休・育休は正社員でなければ取れない企業が多く、正社員になれる大都市に女性は流れる。また、地方では雇用体系や賃金の男女格差、女性を差別する保守色の強い地方も多い。結婚相手として収入の高い男性が地方には少ないことも都会に若い女性が流出する背景になっています」
地方からの若い女性の流出を止める対策は、少子化傾向を反転させる大きな要素になってくる。ひいては東京一極集中を抑えることにつながってくる。
(ジャーナリスト・木野活明)
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