中国優位で加速するEV電池の淘汰…欧州系メーカーの破綻は3社目に(重道武司)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月28日 9時26分
ノースボルト(C)ロイター
【経済ニュースの核心】
中国勢による市場の席巻をますます助長することになりそうだ。EV(電気自動車)の基幹部品である車載電池を手掛けるスウェーデンの新興企業、ノースボルトが先週、経営破綻した。
欧州系電池メーカーの破綻は2023年以降、これで3社目。“EV変調”がもたらす市場の「揺らぎ」に、トヨタ自動車やホンダなど国内勢の間でも警戒感が広がる。
ノースボルトは16年に米テスラの元幹部らが設立した。独フォルクスワーゲン(VW)、BMWやシーメンスのほか、傘下のファンドを通じ米金融大手、ゴールドマン・サックス(GS)系の資産運用会社なども出資。21年末にはスウェーデン北部で大規模量産工場(ギガファクトリー)を稼働させるなど一時はEV関連新興の中で「勝ち組」(マツダ関係者)とも言われてきた。
しかしエンジニアの確保が思うように進まず、年産能力16ギガワット時としてきた工場の生産量は1ギガワット時程度にとどまるありさま。
今年6月にはBMWから20億ユーロ(約3200億円)分の発注キャンセルを食らう一方、中国勢の低価格攻勢にもさらされ、資金繰りに行き詰まった。
■負債総額は58億ドル
同社が米テキサス州の連邦地方裁判所に申請した連邦破産法第11条(チャプター11)に基づく資料などによると負債総額は58億ドル(約9000億円)。破産法申請時に2位株主にまでなっていたGSは保有株が「無価値同然となった」(メガバンク筋)ことで8.96億ドルの損失計上を余儀なくされるもようだ。
EV販売自体の失速もあって、欧州では車載電池メーカーの経営危機が続く。23年には英ブリティッシュボルトと、同じくAMTEパワーが相次ぎ破綻。今年6月には独ベンツグループなども出資する仏オートモーティブ・セルズ・カンパニーが独・伊で建設を計画していた量産工場の一時凍結を強いられた。
調査会社などによると、世界の車載電池市場は中国CATLが40%弱のシェアを握り首位。上位10社中6社を中国勢が占める。おまけに価格は足元で21~22年ごろの3分の1程度にまで下落。「とてもじゃないが日欧米勢が太刀打ちできない水準」(トヨタ筋)で推移する。
米トランプ次期政権の下、最大7500ドルを税額控除するEV補助金の廃止もほぼ確実。「淘汰」が本格化するのは、むしろこれからかも知れない。
(重道武司/経済ジャーナリスト)
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