歯の治療を受けるならクスリに注意(4)【ステロイド剤】感染やショック症状を起こすリスクあり
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月29日 9時26分
事前に追加服用が必要な場合も
「ステロイド剤」を長期服用している人も、歯科治療では注意が必要になる。ステロイド剤は、副腎で作られる副腎皮質ホルモンという成分を配合している薬のことで、体の中の炎症を抑えたり、免疫力を抑制する作用があり、気管支喘息や関節リウマチなど、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、血液疾患といったさまざまな病気の治療に使われている。
「炎症」というのは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体と、白血球などの免疫細胞が闘っている状態だ。ステロイド剤には抗炎症作用と抗免疫作用があるため、長期にわたって服用していると細菌感染が起きやすい=易感染性の状態になる。小林歯科医院院長の小林友貴氏は言う。
「われわれの口腔内には400種類近い細菌が存在していて、その数は100億を超えるといわれています。そのため、ステロイド剤を長期服用している患者さんは歯周病や虫歯が悪化しやすくなったり、抜歯や手術といった外科的処置を受けた後は傷が治りにくくなり、腫れたり膿んだりしやすい状態になります。また、骨粗しょう症治療薬のビスホスホネートなどを併用している場合、口腔内細菌の感染によって顎の痛み、腫れ、化膿といった症状が出る『顎骨壊死』を起こしやすくなるという報告もあります」
そうした口腔内トラブルを防ぐため、ステロイド剤を長期服用している患者の歯科治療では、細菌を殺す抗生物質をしっかり服用することが重要で、外科的処置を行う際は抗生物質を通常よりも長い期間飲んだり、治療の前に抗生物質を予防投与するケースもあるという。こまめに通院して頻繁に消毒を実施する場合もある。
また、ステロイド剤の長期服用は、ストレスの影響を軽減する作用がある副腎皮質ホルモンの分泌を抑制する。そのため、歯科治療で受けたストレスによってショック症状を起こし、発熱、嘔吐感、筋肉痛、血圧の低下といったトラブルが生じるケースがある。
「そうしたショック症状を防ぐために、事前にステロイド剤を追加して通常よりも少し多めに服用する『ステロイドカバー』が必要になるケースもあります。その場合、ステロイド剤を処方している主治医と連携したうえで歯科治療を行います。自己判断でステロイド剤を休薬したり、増量するのは持病を悪化させる危険があるので厳禁です」
より安全に歯科治療を実施するためには、その患者がどんな薬を飲んでいるかを歯科医がきちんと把握することが欠かせない。虫歯や歯周病を治療する前には、自分が服用している薬について、必ずきちんと伝える必要がある。 =おわり
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