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竹脇無我さんには「絵になる人は何をやっても絵になるんだなぁ」と思った(本多正識/漫才作家)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月30日 9時26分

竹脇無我さんには「絵になる人は何をやっても絵になるんだなぁ」と思った(本多正識/漫才作家)

竹脇無我さん(C)日刊ゲンダイ

【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#220

 竹脇無我

  ◇  ◇  ◇

 お会いしたのは20年以上も前。8年間もの闘病生活を終えられて復帰された後でしたが、テレビで見ていた頃と変わらずダンディーで、腰が低く人当たりの優しい、本当にすてきな方でした。

 本番前の打ち合わせで「本名なんだけど無我っておかしな名前でしょ? 子供の頃は好きじゃなかったな~」と話しかけてくれました。

「僕はフリートークって得意じゃないんですよね。みなさんが思っている“竹脇無我”を壊しちゃいけないとか演じなきゃいけないとかって考えちゃうんですよ。でも、何をやっても僕は僕だから普通にしゃべるしかないんですよね」と、ご自身に言い聞かせるようにはにかむ姿が既に絵になっている。多くの番組の構成をやらせていただいたおかげでたくさんの有名人、著名人の方とお会いしましたが、ひとつひとつの動きや話される時の表情が切り抜いた一枚の写真のようで「絵になる人は何を言ってもやっても絵になるんだなぁ」と思った方でした。

 甘いマスクと知的で優しいイメージで当時は「理想の夫ナンバーワン」と呼ばれていましたが「理想とはかけ離れてると思いますよ。わがままだし、気ままだし、あれは画面の中の誰かを演じてる僕ですから、竹脇無我が理想なんてとんでもないです。でも、みなさんがそう思ってくださってるんだから裏切っちゃいけないなとか、また考えちゃうんですよね」と苦笑い。

 結婚して一番驚いたのは「つまんないことなんですけど、食事の時にレストランみたいにお皿に1人分ずつ分けて出てきた時に“お店じゃないんだから”って。僕の育った家は、大きなお皿にドーンと入ってるおかずを好きな分だけ取って食べるっていう食卓だったんで“家でもお店みたいにするんだ”って、あれは正直びっくりしましたね」と、奥さんとの小さなカルチャーショックについて熱弁されている姿がまた“絵になって”いました。

 演技の話では森繁久弥さんとの思い出を懐かしそうに話されていました。お父さんがNHKのアナウンサー1期生で、森繁久弥さんと親友だったそうで、森繁さんを「オヤジ」と呼んで慕われていました。森繁さんはいつも本番でアドリブを言ってくるので、それに対応するのに必死だったそう。「(森繁さんいわく)普段の会話で、相手が何を言ってくるかなんてわかりゃしないんだから、何言われても返せるようにしとかなきゃいかんだろう、とわかったようなわからないような理屈で押し切られましたね。でもオヤジの言うことだから最後は“はい、はい”って聞いてましたね」と楽しそうに振り返っておられました。

 もっと“枯れた演技”を見たかったという思いもありますが、67歳という年齢で旅立たれました。きっと天国でも先輩方と芸談に花を咲かせておられることでしょう。

(本多正識/漫才作家)

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