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榊原るみさんは「男はつらいよ」のマドンナ抜擢が転機に 「山田洋次監督とお茶を飲んでいる間に決まり…」【その日その瞬間】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月2日 9時26分

榊原るみさんは「男はつらいよ」のマドンナ抜擢が転機に 「山田洋次監督とお茶を飲んでいる間に決まり…」【その日その瞬間】

榊原るみさん(C)日刊ゲンダイ

【その日その瞬間】

 榊原るみさん(俳優/73歳)

  ◇  ◇  ◇

 往年の人気女優、榊原るみさんは現在は復帰して活動中。ターニングポイントとなったのはマドンナ役に抜擢された「男はつらいよ」の第7作だった。

 1971年に公開された「男はつらいよ 奮闘篇」のお話をいただいた時はまだ20歳でした。無名に近い新人だったのになぜ抜擢されたかというと、オーディションはなくて山田(洋次)監督と喫茶店で直接お会いしましたら、お茶を飲んでいる間に出演が決まっちゃったんですよ(笑)。本当にのどかな時代でした。

 今思えば何を話したか覚えていないのですが、私の表情やしゃべり方で今度のマドンナ役の花子にちょうどいいと思われたのかもしれません。

 それまでマドンナは若尾文子さんや新珠三千代さんら有名な女優さんばかりでしたから、まだ何の色もついていない私がよかったのかもしれませんね。それで当時、最年少のヒロインを務めることに。

 でも、私は「男はつらいよ」に抜擢される重大さに気づいてなかったですね。というのも、映画をあまり見せてもらえずに育ちましたから。親から「映画館は暗いし不良が行く場所だから行っちゃダメ」と言われ、唯一親が同伴して見にいっていい映画はオードリー・ヘプバーンが出るようなハリウッド映画だけ。だから、ヤクザ映画全盛の日本映画を見ることがなかった。寅さんも見せてもらえなくて。それで逆に現場に対して怖さがなかったのかもしれません。

 現場ではキャストの方たちやスタッフさんにはとても大切にしていただきました。後で聞いた話ではマドンナの女優さんはプレッシャーでノイローゼになる方もいらして大変な役なんです。それに、当時の山田組の雰囲気も独特でスタジオ中がシーンとして私語を交わす人は誰もいなくて。山田組のスタッフの方たちもプライドが高かったですから。

「男はつらいよ」が話題になったことで「気になる嫁さん」の主役に

 なのに、私は芸能界のことを何も知らないので緊張感がなく、ニコニコ笑って現場にいるものですから、みなさん、やさしくしてくれたんでしょうね。おばちゃん役の三崎千恵子さんには「あなた、恵まれてるねえ。最初に山田組で仕事させてもらえて本当に幸せ者だねえ」と声をかけられたのですが、私は「そんなもんかなあ」と思って(笑)。何十年もたってから、言われた意味を理解できました。

 同年の10月に連ドラの「気になる嫁さん」の主役に。「男はつらいよ」が話題になったことで決まったと思いますので、ここが私のターニングポイントでした。共演者の石立鉄男さんがこのあと主役になり、ヒットさせていく枠の主役ですから大抜擢ですよね。

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