ポストシーズンの分配金が示す光と陰…一般職員の年収は約5万ドルで平均未満、“やりがい搾取”の一面も(鈴村裕輔)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月4日 9時26分
今年2024年ワールドシリーズを制したドジャース(C)ロイター/USA TODAY Sports
【メジャーリーグ通信】
最高であり最低でもあったのが、今年のポストシーズンの分配金である。
1億2910万ドルという分配金の総額は、昨年の1億780万ドルを超える史上最高額となった。
一方、最も多くの分配金を得たドジャースの1人当たりの満額の分配金は47万7441ドルで、ポストシーズンの出場球団が従来の10チームから現在の12チームに拡張された2022年以降では最低の金額となった。
理由は明白で、大リーグ機構からポストシーズンの出場球団に与えられる分配金の取り扱いは、各球団の選手の投票によって決定する。
すなわち、分配金を受け取れる対象を選手だけにするのか、球団職員も含めるのか、受け取る人数で均等に配分するのか、別の指標によって重みづけをして分けるのかなど、全ては選手の総意によるのである。
今回のドジャースは満額の配分金の受け取り対象者が79人と昨年のワールドシリーズで優勝したレンジャーズの64人に比べて15人多い。そのため、分配金の総額は過去最多となったものの、1人当たりの金額は低下することになった。
ドジャースの選手たちは、ポストシーズンに出場した選手のほか、監督やコーチに加え、球団の職員たちも分配の対象とすることを選んだ。これは、背後で支える職員がいなければ選手たちが心置きなく試合に集中することができないという考えによる。
実際、球場では用具を整備したり、練習後や試合後の選手のユニホームを回収して洗濯したり、さらには報道陣のために必要な資料を手配したり、遠征時の航空機の手配を行ったりと、多くの職員が働いている。
しかも、ゼネラルマネジャーや各部門の長を除けば、一般の職員の年収は約5万ドルで、2023年に米国労働統計局が発表した平均額の約5.9万ドルを下回る。ドジャースという米国のプロスポーツ界の名門という存在は輝かしく、選手年俸の総額は球界屈指ではあっても、職員一人一人の給与は本拠地であるカリフォルニア州の平均年収8万4448ドルと比べれば低い。
もちろん、収入と仕事の充実度は異なるし、ある者にとっては不満足な給与も他人から見れば十分な額かも知れない。
ただ、職員の野球への情熱の高さが薄給を受け入れさせているのも事実である。その意味で、今回のドジャースの選手たちの判断は職員たちの献身的な努力に報いるものであるとともに、図らずも分配金という外的な要因によって低めといえる給与の不足額が補填されていることが示されたのである。
(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)
◇ ◇ ◇
いまやメジャーリーグの顔となった大谷だが、2028年ロス五輪に本人は乗り気でも「出場できない可能性」が濃厚だという。いったいなぜか。どうして大谷は大舞台に立てないのか。その「3つの理由」とは。
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