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突然母が別人になった(5)レビー小体型と診断…両親2人でどう暮らしていけるのか

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月4日 9時26分

突然母が別人になった(5)レビー小体型と診断…両親2人でどう暮らしていけるのか

母が倒れた実家の部屋(如月サラさん提供)

 2020年7月、母が、近くのクリニックでおそらくレビー小体型認知症だろうと診断された。プロのケアを受けようという私の提案を、世間体が悪い、恥だと言ってかたくなに拒む父と母を実家に置いて、私はいったん東京に帰るしかなかった。

 母の住む熊本県は、地域での認知症の早期診断と専門医院での治療をつなげる「熊本モデル」と呼ばれる体制を構築しているため速やかに専門医院につなげてもらうことができたが、初診を待つ患者も多く、母の順番はどれくらい先になるかわからないという。それまで父と母だけで暮らしていけるはずがない。そもそも母は食事も入浴もできない状態なのだ。

 どう対処すべきか考えあぐねながらも、毎日父に電話をして様子を尋ねることしかできなかった。東京に戻ってきて3日後の8月1日午前中。珍しく父のほうから電話がかかってきた。

「お母さんが倒れた。今、救急搬送されている。T叔母さんが一緒に救急車に乗っていった」

 自宅で仕事をしていた私は仰天した。認知症と診断され、見えないはずのものが見えると言いだしても、母には倒れるほどの深刻な体の症状はなかったはずだ。

 詳しいことを聞こうとしても、動転しているのか、まったく要領を得ない。それに父は25年ほど前、定年を目前にして口腔がんにかかり、下顎をすべて取り去る大手術を受けたがんサバイバーだ。何度かにわたる大がかりな形成手術は受けたものの、初めて会う人はギョッとするほど顔面が大きく変形してしまった。

 咀嚼ができないので、食事はすべて流動食。ほとんど動かない口でなんとかしゃべるものの、何を話しているのかはなかなか聞き取れない。

 母が元気な間は普段、父と直接コンタクトを取ることがほとんどなかったので、この時も、内容を聞き取るのに互いに四苦八苦した。

 じりじりと待っている時間は長く感じる。数時間後にT叔母から電話がかかってきた。母が倒れたのは熱中症による脱水症状であること。コロナ禍でもあり、なかなか受け入れ先の病院が見つからなかったこと。1週間程度の入院加療が必要であろうとのこと。叔母も病院の内部には入ることができなかったという。

 後で聞いたところによると、母の部屋にはエアコンがついていなかったそうだ。前日の当地の最高気温は35.4度。

 そういえば、3日前に実家に戻ったときも、母の部屋にはエアコンがついていなかった。本人は「つけていても勝手に切れてしまう」と言っていたが、調べてもタイマーなどセットされていなかったのだった。 (つづく)

▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。

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