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医師が処方する「運動療法処方箋」とはどんなものなのか?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月5日 9時26分

医師が処方する「運動療法処方箋」とはどんなものなのか?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

梨状筋症候群の大きな原因は運動不足

【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

「座るとお尻が痛い」「足がピリピリとしびれる」「なんとなく足が重だるい」なら、「梨状筋症候群」の疑いがあります。

 骨盤(仙骨)から大腿骨にかけて伸びる梨状筋が、何らかの原因で筋肉の下を通る座骨神経を圧迫し、座骨神経症状を引き起こした状態です。

 その大きな原因とされるのが運動不足です。通常、筋肉は弾力性を保つために伸び縮みを繰り返しています。ところが座りっぱなしの時間が長いと、筋肉の伸び縮みの回数が減って筋線維が働かないためやせ細り、弾力性が失われて硬くなりやすい。肩こりのように、凝り固まった筋肉が座骨神経を圧迫すると、太ももから足先にかけて座骨神経痛が生じたり、梨状筋部に疼痛が起こるのです。

 60代後半の女性は、1年ほど前に、右足に痛みを自覚して受診した整形外科で異常なしと診断されたそうです。ところが日を追うごとに痛みが増し、重だるさから歩けないと外出時はすべてタクシー移動だと言います。当院でMRI検査を行っても、座骨神経症状を引き起こす腰部脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアは確認できません。

 そこで症状が出やすいタイミングを伺うと、「就寝時に右側のお尻を下にした状態で横になったり、寝起きに椅子に座ると右側のお尻が痛くなって、足にしびれが走る」とのこと。触診で右側のお尻を押すと強い痛みを訴えたので、梨状筋症候群の疑いが高いと診断しました。

 硬くなった筋肉をほぐすには、股関節回りのストレッチと、運動が欠かせません。しかし、とにかくほぐせばいいとストレッチをやりすぎたり、誤った方法で運動を行うと、かえって症状が悪化する恐れがあります。

 そういった方におすすめなのが「運動療法処方箋」の利用です。これは障害や疾病の症状改善を目的として、医師が薬の処方箋と同様に運動の種類や強度、頻度などを示した処方箋です。

 厚労省が認定する指定健康増進施設に提示すると、トレーナーがその人の体の状態に合ったトレーニングメニューを作成し、指導を行います。また運動療法にかかった費用は医療費控除の対象になるので、スポーツジムの利用料金が抑えられるのです。

 この制度は、整形外科疾患に限らず、糖尿病や高脂血症、高血圧などの生活習慣病のほか、虚血性心疾患、不眠や気分の落ち込みといったメンタルヘルスの不調にも適用されています。

 ただ、利用するにあたり、運動療法を週1回以上、かつ8週間以上継続するといった条件が定められています。

 病院で運動を勧められたけれど、始め方が分からないのであれば、かかりつけ医に運動療法処方箋について相談してみるといいでしょう。

(田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)

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