突然母が別人になった(6)自分のことができなくなった母、ヘルパーを頑なに拒否する父
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月11日 9時26分
緊急搬送された日の空(本人提供)
レビー小体型認知症の診断を受けた母と、公的支援を受けることを頑なに拒む父親を置いて、仕方なく実家から東京に戻ってきた私に3日後に届いたのは、母が熱中症で救急搬送されたという知らせだった。
倒れている母を発見し、慌てた父がまず行ったことは、近隣に住む母の姉夫婦への電話だった。伯母夫婦が実家に到着したとき、母はまだ板張りの床に倒れたままで、父はただそこでオロオロしていただけだったと聞いた。救急車を呼ぶのは恥だから絶対に嫌だという父を説得して、なんとか乗せていってくれたのだという。
病院と連絡を取ると、衣類や下着など必要なものを持ってきてほしい、そして入院承諾書を書いてほしいとのこと。これまでの一連の出来事で、父が他の人の手を借りるのを恐ろしいほど嫌がることと、理解能力や判断能力がかなり落ちていることがわかったので、おそらく頼むことは難しいだろう。私はまた誰にも言わず、翌日のフライトを日帰り往復で予約した。
母は10日以上、もしかしたらそれ以上、風呂にも入らず下着も替えていなかったようだという。3日前の帰省時に、私はそれに気づくことができなかった。
父親に問いただすと、母が自分でやろうと思えばできると思っていた、と力なく答えた。しかしこんな事態に陥っているのに、母が退院しても、家の中にヘルパーらが入るのは絶対に嫌だ、という態度は崩さない。
「お父さんが支援はいらない、いらないと言うからこうなったんじゃないか」と私は声を荒らげた。
翌日、朝一番の羽田からの帰郷便に乗り、実家に到着するととりあえずの準備をして、母の車でA救急病院へ向かった。
前日、入院先の評判を検索したのだが、口コミ評価がかんばしくないことが気がかりだった。しかし、医療が逼迫しているコロナ禍で、熱中症で倒れた母の入院を受け入れてくれた病院には感謝するしかない。
到着すると、フェースシールドと医療用のサージカルマスクをつけた看護師が小走りに裏口に出てきた。申し訳ないけれど、東京の人はここから先へは入れません。もちろんお母さまにも会えません。そう告げると、パイプ椅子を広げ、母は熱中症であること、点滴と内服薬で安静にするという処置を行うことが告げられ、私はサインをした。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。
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