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南海電鉄が「通天閣」の株式7割を取得へ…浮上する建て替え論と実現性の壁(重道武司)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月12日 9時26分

南海電鉄が「通天閣」の株式7割を取得へ…浮上する建て替え論と実現性の壁(重道武司)

大阪のシンボル・通天閣(C)日刊ゲンダイ

【経済ニュースの核心】

「あべのハルカス」でもなければ、大規模再開発で林立しつつあるJR大阪駅周辺の超高層ビル群でもない。生粋のナニワっ子からすると、大阪のランドマークといえば太閤ゆかりの「大阪城」であり、新世界にそびえ立つ「通天閣」ではないか。

 その通天閣の運営会社「通天閣観光」が関西私鉄大手、南海電気鉄道の傘下に入る。同社が進める「グレーターなんば」構想──主要ターミナルであるなんば(難波)駅から新今宮駅周辺を再開発するプロジェクト──の核施設として、誘客の目玉にする方針だが、民鉄業界関係者らの間では早くも「建て替えも視野に入れているのでは」といった観測も飛び交う。

 通天閣観光は1943年に火災で大破した通天閣の再興を目指して地元有志らの出資で55年に設立された会社だ。今回、南海電鉄は「観光」の大株主でもある高井隆光社長らから発行済み株式の70.8%(議決権ベース)を買い取る。2024年度中に臨時株主総会を開き、他の株主の承認を得たい考えだ。

 取得価格は非公開だが、「観光」の純資産は今年3月末時点で42.29億円。仮に3割のプレミアムを乗せて、その約7割を引き取ったとすると40億円弱という計算になる。

「観光」の業績は悪くない。06年ごろには年間入場者数が100万人を割り込んだこともあったが、インバウンド需要の盛り上がりもあって23年度は約137万人を記録。コロナ禍前の水準を回復し、売上高は15億円を突破。

 営業利益は前年度比3.4倍の6.3億円に膨らんだ。高井社長も「体力のあるうちに先手を打ちたかった」と保有株放出の意図を明かす。

■開業から70年で老朽化

 建て替え論が浮上するのは今の2代目・通天閣が開業から70年近く経ち、老朽化が指摘されているためだ。東京スカイツリーの建設と「ソラマチ」開発で名を上げた東武鉄道の成功例が想起されるからでもあるのだろう。

 とはいえ実現性にはハードルも高い。現通天閣は市道をまたぐ形で建てられており、「地権者も複雑に入り組んでいる」(不動産業界筋)とされている。権利関係の調整だけで長い月日を費やしてしまうことになりかねない。

 事業費調達の壁もある。現通天閣は奥村組が施工、建設費は当初見込みから1.3倍近く増大したという経緯もあるらしい。南海電鉄にとって早期に結論を出すにはあまりに“難解”なテーマだろう。

(重道武司/経済ジャーナリスト)

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