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藤原喜明さんは雑談では柔和な顔でも、プロレスの話になると瞬時に鋭い視線に(本多正識/漫才作家)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月14日 9時26分

藤原喜明さんは雑談では柔和な顔でも、プロレスの話になると瞬時に鋭い視線に(本多正識/漫才作家)

藤原喜明(C)日刊ゲンダイ

【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#222

 藤原喜明

  ◇  ◇  ◇

「藤原組長」「生涯現役レスラー」「関節技の鬼」と呼ばれていた藤原さんは、リングと同じように、スタッフ全員に直立不動で頭を小さく下げて挨拶されました。

 プロレスの中でも藤原さんファンなので、これまで見てきた試合の話をすると「いくつですか? 詳しいな~!」と喜んでくださり、打ち合わせもそこそこにプロレス談議になりました。師匠筋にあたるアントニオ猪木さんが「いつでも誰とでも戦います!」と宣言されて以降、全国から対戦希望者が殺到して、その前に立ちはだかって防波堤になってらした噂について伺うと、「よく知ってますね~! 猪木さんと戦わせろ! って腕に覚えのある人たちがたくさんいましたね。手紙や電話で連絡をくれる人には丁重にお断りしたんですけど、直接(プロレスの)練習場へ来る猛者もいて、断っても“戦うまで帰らん!”って居座られるんで、しょうがないから私に勝ったら猪木さんと戦えますと言って」相手をされていたそう。それもギブアップ程度ではまた来るので「どんなケガをしても何も補償は求めません」という誓約書にサインをさせてから戦ったそうです。

「それは……実際に腕折ったり、足折ったりするんですか?」と聞くと「ご想像にお任せします」と苦笑い。対戦時間を伺うと「数秒から数分かな……空手をやってる人は蹴りとかがあるんでちょっと時間がかかったけど、捕まえたら秒単位で終わりでしたね。こっちはプロだから」とファンにはおなじみの不敵な笑みを浮かべておられました。

 スタッフの一人が「ヘッドロックって痛いもんなんですか?」とファンからすればとんでもない質問をすると、藤原さんが「やってみましょうか?」と立ち上がり、ヘッドロックをしはじめて……形だけの段階で「痛い痛い」と言い、藤原組長が「いきますよ」とほんの少し力を込めた瞬間「まいりました!」と藤原さんの腕をパンパン叩いてギブアップ。楽屋は大爆笑で、本番でもトミーズ健ちゃんを相手に実演し、大騒ぎでした。

 雑談の時は柔和な顔をされていたのが、いざプロレスの話になると瞬時に鋭い視線に変わり熱気、殺気が漂うその真剣度。話の端々に“命がけでやってきた”という空気がひしひしと伝わってきました。一つ間違えば命の危険もある大変な仕事ですが「好きなことを一生懸命やるだけですよ」と謙虚に話される姿が実に男前でした。何をするのも中途半端はだめだということでしょう。

 75歳でリングに立ち、俳優、タレント、陶芸家、イラストレーター、エッセイストと多才な顔を持たれている藤原組長。これからもお体に気をつけて生涯現役を全うしていただきたいと思います。

(本多正識/漫才作家)

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