小倉智昭さんは77歳で他界…膀胱がんは再発リスクが高い【中川恵一 がんサバイバーの知恵】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月14日 9時26分
小倉智昭さん(C)日刊ゲンダイ
【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】
アナウンサーの小倉智昭さん(77)が膀胱がんで亡くなりました。報道によると、先月になって強い腰痛で検査を受けたところ、骨盤や腰椎、髄膜などへの転移が見つかったそうですから、かなりつらい最期だったかもしれません。
今回は、膀胱がんについて紹介します。膀胱がんを組織で分けると、9割は移行上皮がんでキノコのように増殖するのが特徴です。このタイプで早期なら内視鏡で切除して膀胱を温存することができます。2018年に膀胱がんを見つけた私も幸いこの早期だったため、内視鏡切除で膀胱を温存することに成功しました。
小倉さんも16年に膀胱がんを患うと、内視鏡で切除したといいますが、医師からは「早期の全摘を勧められた」とも語っていました。そして18年に全摘し、21年には肺への転移が見つかっています。
実は膀胱がんは再発しやすく、1~2年以内に6~7割が再発するとされます。さらに10~20%は再発を繰り返しながら膀胱の粘膜の奥へと少しずつ浸潤するため、長期にわたってこまめな検査で適切に再発リスクを潰していくことがとても重要です。
10年を超えて経過観察が必要で、米国で「最も医療費がかかるがん」といわれるのは度重なる検査費用の高さを指摘しています。逆にいうと、死亡に直結しないケースが少なくないことの証左ともいえるでしょう。
膀胱を全摘すると、尿をためるパウチが必要ですから、表に出る仕事の方にはつらいでしょう。生前の菅原文太さんも膀胱がんを内視鏡で切除したものの、その後全摘を勧められ、それに伴って尿をためるパウチを設けるのが嫌で私のところにセカンドオピニオンを求めに来られました。小倉さんのケースと近い状況でした。
結局、文太さんには抗がん剤と陽子線を組み合わせた治療を勧めて膀胱温存に成功。最期まで元気に過ごされていましたが、小倉さんは全摘を嫌がり、先延ばしにされていたことが報じられています。それで膀胱がんを浸潤させた可能性はあるでしょう。
移行上皮がん以外では、腺がんと扁平上皮がんがあり、腺がんでは慢性炎症や粘膜への刺激がリスクで、移行上皮がんに比べて高リスクです。2年ほどで亡くなる方が珍しくありませんが、化学放射線療法を用いると、2年を超えて生存するケースも増えています。
どのタイプにせよ、早期に見つけて適切な治療を受けることが大切。小倉さんのご冥福をお祈りします。
(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)
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