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たった1つのアイデアで多くの人を動かす「インサイト」と似て非なる“3つの概念”決定的な違い

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月16日 9時26分

(※エスノグラフィー調査 特定の集団の日常生活を詳細に観察し、理解するための研究方法。通常、現場で長期間にわたって対象者の普段の環境や行動の観察を行ない、人々の行動などを記録します)

◼️「隠れたホンネ」だけでは「人を動かさない」

 例えば、新しい掃除機の商品開発をするために、生活者が掃除機をかける様子を注意深く観察したり、掃除に対する考え方を徹底的にヒアリングしたりします。その結果、もっともらしい結論として「掃除機をかけることとは、自分の気分を変えるための心の掃除でもある」といった「ファインディングス」が導き出されたとします。

 これは、掃除機を使う生活者自身が気づいていなかった「隠れたホンネ」であるかもしれませんが、今回の目的である新しい掃除機を生み出すようなアイデアのヒントにはつながらず(発想が拡がらず)、「人を動かさない」というケースです。

何を目的として「人を動かす」ことを狙うのか

 つまり、インサイト探索時には、自分たちは何を目的として「人を動かす」ことを狙っているのかを絶えず意識していないと、発見した満足感だけを追い求めてしまい、そもそもの目的が達成できない危険性があるということです。

 このように「隠れたホンネ」ではあるが、自分たちの目的に合うようには人を動かさない、インサイトと似て非なるものを本書では、「ファインディングス」と呼んであえて区別します。

◼️インサイトは、「常識/定説」ではない

 当然ながら、常識や定説と呼ばれるものは「人を動かさない明らかなホンネ」です。新製品会議の例で言えば、「見たままの数字、ありきたりの提案、誰もが知っていること」です。

 例えば、ドリルの例で言えば「6ミリのドリルが売れていることから、DIYが流行っている」とか、掃除機の例で言えば「ターゲットは、今の掃除機に、吸引力とデザイン性の両方を求めている」といったようなことです。

 何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんが「インサイト」という言葉を熟考することなく、なんとなくの受け売りで使い、あまりに当たり前の常識や定説を、生活者の「インサイト」と呼んでいるケースが、実際のビジネスの現場でも多々散見されています。

「インサイト」は、その条件を満たし得る適切なものが発見できれば、この上なく強力な威力を発揮します。したがって、何が「インサイト」であって、何が「インサイト」ではないのか?を絶えず、丁寧に確認しながら考えを進めていくことが、急がば回れ的に、優れたインサイトにたどり着く近道になるでしょう。

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