世界で1100万部突破!空前の大ヒット書籍『嫌われる勇気』が人の心をつかんだワケ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月16日 9時26分
実は/本当は、
「幸せに生きるために、嫌われることを恐れず自分の意見を伝える勇気を持ちたい」
と自分は思う。
「人に好かれることにこだわりすぎると、人の期待に応えようとして他人に振り回されることが増え、人間関係のストレスや悩みを抱えやすい。アドラー心理学の考え方を学んで、『嫌われる勇気』を持てれば、他人の言動に左右されることなく、自分の人生を自分らしく歩むことができる」という、アドラー心理学の要点を「逆説的」に伝える意図があったのかもしれません。アドラー心理学と言っても興味を持たない人を振り向かせるために、みんなが心の奥底で思っている「インサイト」を、非常にうまく突いています。
極めて日常的な言葉に「言語化」
『嫌われる勇気』というタイトルの素晴らしい点は、「承認欲求が満たされなくてもいい」というやや専門的な表現を「嫌われる勇気」という、極めて日常的な言葉に「言語化」した点です。「承認欲求」という言葉も、意味は伝わらなくはないですが、日常使いの言葉ではない、やや専門的な言葉のために、人によってはややとっつきにくさがあります。
◼️話し言葉であり、意外な組み合わせ
しかし「嫌われる」「勇気」といった言葉は、誰もが普段から使う〝話し言葉〟のため、言わんとすることが非常に明確かつ早く伝わるのです。また、普段は「勇気」は、「嫌われる」という言葉と一緒にはあまり使われません。「嫌われる」の後に「勇気」という言葉を続けている点も、「嫌われる勇気」という言葉への印象を強くしています。
この後、SNSは現在に至るまで発展し続け、『嫌われる勇気』は、発売以来、大ヒットを記録していますが、このような、人間の普遍的な性質を捉えつつ、そのときどきの時代に特徴的に見られるインサイト=人を動かす隠れたホンネを見事につかみ、読者に新しい視点を提供して、多くの人々の心を捉えたとも言えるでしょう。
▽佐藤真木(さとう・まき)
株式会社電通 第3マーケティング局 シニア・マーケティング・ディレクター
慶應義塾大学経済学部卒業。2004年、株式会社電通に入社後、主にマーケティングやブランディング、戦略立案に従事。大手クライアントから官公庁、地方自治体、スタートアップまで、100社以上のキャンペーン設計、広報戦略、新商品開発、新規事業戦略、ビジネスデザイン、企業ブランディング、地域ブランディング、アート思考研修などの企画、実施、ディレクションを行う。共著に『場所のブランド論』(中央経済社)、教育講座の執筆協力に『想像力を武器にする「アート思考」入門』(PHP研究所)がある。
▽阿佐見綾香(あさみ・あやか)
株式会社電通 第4マーケティング局 マーケティング・コンサルタント
埼玉県さいたま市浦和出身。早稲田大学卒業後、2009年、株式会社電通に入社。以来、マーケティング・コンサルタントとして、数多くの企業のマーケティング、経営戦略、事業・商品開発、リサーチ、企画プランニングに従事。担当した業種は化粧品・アパレル・家庭用品・食品・飲料・自動車・レジャー・家電など。大手企業だけでなく、ベンチャー・中小企業も担当するなど、幅広い業種・規模の企業を手掛ける。著書に、累計2万部越えのベストセラーとなった『電通現役戦略プランナーの ヒットをつくる「調べ方」の教科書 あなたの商品がもっと売れるマーケティングリサーチ術』(PHP研究所)がある。
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