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常用薬の作用によって「物忘れ」が生じるのはなぜか【介護の不安は解消できる】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月16日 9時26分

常用薬の作用によって「物忘れ」が生じるのはなぜか【介護の不安は解消できる】

写真はイメージ

【介護の不安は解消できる】

 認知症患者の中で最も多いのはアルツハイマー型認知症で、日本では全体の約7割を占めると推計されています。物忘れや見当識障害、不安やうつといった症状が特徴的で、近年は認知症という言葉が浸透したことで「高齢で物忘れが増えたら認知症に違いない」と考える方も多くいらっしゃいます。しかし、認知症の疑いで受診した患者さんの中には、処方薬が原因となる認知機能障害のケースも報告されており、特に高齢者では注意が必要です。

 その原因のひとつに「第1世代抗ヒスタミン薬」が挙げられます。アレルギー反応を引き起こすヒスタミンをブロックする働きがあり、花粉症や鼻炎、皮膚のかゆみといったアレルギー症状に対して有効な薬です。一方で、ヒスタミンは脳内の覚醒や記憶を担っているので、ヒスタミンの働きが阻害されると、眠気を誘発したり覚醒が低下してボーッとするといった副作用が起こりやすいのです。

 また、過活動膀胱や気管支喘息の治療薬には「抗コリン作用」を持つ成分を含み、副交感神経の神経伝達物質であるアセチルコリンを抑制します。アセチルコリンは脳の中でも使われている神経伝達物質でもあるため、抗コリン作用の強い薬剤を使用すると、高齢者においてせん妄や記憶障害、認知機能を障害するリスクを高めます。

 とりわけ高齢者で注意が必要なのが「ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬」です。睡眠薬の中でも最も主流とされ、現在は不眠症に限らず不安障害やうつ病など、幅広い疾患に処方されています。ただ、眠りを促したり不安を和らげる薬は、意識レベルを低下させて物忘れやせん妄を引き起こす可能性が高い。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」(日本老年医学会)では、「高齢者には可能な限り使用を控えるべき薬剤」とされています。なお、非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬についても安全とは言えず、慎重な使用が推奨されています。

 突然、認知症のような症状が現れ、その原因に常用薬が疑われる場合には、自己判断での中断は避けて処方した医師に相談する必要があります。急な減薬や断薬は、かえって症状が悪化したり、思わぬ副作用が生じる危険性が高い。患者さんの中には、薬に対する不安があっても、「処方してくれたかかりつけ医に相談しづらい……」と、病院を転々としたり、自己判断で服薬を中断してしまう方が多い印象を受けます。

 心配な場合は、まず薬剤師に相談し、疑わしい薬について処方医に確認してもらいましょう。

▽橋本将吉(はしもと・まさよし)2012年3月、杏林大学医学部医学科卒業、14年4月、医療法人社団洪庵会常勤医師、19年、現在の「東京むさしのクリニック」開業。日本で唯一の医学生のためだけの個別指導塾「医学生道場」を運営(https://igakuseidojo.com/)。

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