突然母が別人になった(7)父の過剰な反応に驚き、うんざりした
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月18日 9時26分
母が撮った幼い頃の私と父(如月サラさん提供)
熱中症で救急搬送された母の入院先に着替えを届け、手続きをするため、私は東京から朝一番の飛行機に乗って実家に向かった。コロナ禍だったこともあり母には会えず、病院の裏口のパイプ椅子で入院の手続きを行うことになった。
ここで驚くことがあった。看護師に、フェースシールドの奥から「新規の患者さんは新型コロナウイルスへの罹患がないかの観察という意味もあり、個室に入院していただくことになります。ついては個室料金は1日9100円です」と告げられたのだ。1日約1万円が別途かかるのか!
プラスチックグローブに包まれた指で手渡された入院診療計画書には、推定入院期間が2週間と書かれており、私はいきなり発生したその支払いにクラクラした。
そもそも、両親にどれくらい蓄えがあり、いくら年金をもらっているかといったことを、私はまったく知らないのだ。この入院費を彼らが支払えるのかどうかも判断できない。もし難しい場合は、私が払うしかないだろうと覚悟を決めた。
結果的に、母は個室に4泊したのちに一般病室に移ることができ、個室料は4万円程度で済んだのだが、今後認知症の専門医に診察してもらい、おそらく入院するだろう母にかかる費用を考えると気が重くなってきた。
A救急病院から実家に帰宅後、ようやく父と話す時間を持てた。母はしばらく入院すること、その間、ひとりで生活してほしいこと、そして4匹の猫の世話をちゃんとすることをお願いした。
混乱しているだけなのか、父もこのとき既に認知に問題が生じていたのかはわからないが、「お母さんも僕も入院なんてしたくなかったのに、どうしてこんなことに!」「帰ってきてお母さんに下着を届けてくれなんて僕は言っていない、あなたが勝手に帰ってきて勝手なことをしている!」と過剰な反応をされ、驚き、うんざりした。
ただ、20年以上前に口腔がんで下顎をすべて取り去る手術をしていた父は、通常の食事が取れないため流動食をすべて自身で作る習慣がついていたのは幸いだった。ひとりになって食事ができないという心配はないだろう。私は夜のフライトで東京に帰るために、近くのバス停まで車で送ってもらった。これが父と会う最後の日となることを、そのときの私はまだ知らなかった。 (つづく)
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