大型契約が球団経営に与える負の影響…米プロスポーツ球団の市場価値は上昇の一途、球団売却で精算の選択肢も(鈴村裕輔)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月18日 9時26分
メッツ入りしたソト(右)とコーエン・オーナー(C)ロイター/USA TODAY Sports
【メジャーリーグ通信】
1年前に大谷翔平がドジャースと締結した10年総額7億ドルというプロスポーツ史上最高の契約は、1年後にフアン・ソトがメッツと結んだ15年総額7億6500万ドルによって更新された。
大谷とドジャースが契約の水準を引き上げたことは間違いないし、市場規模が過去最大となり、各球団の収益も拡大している大リーグだからこそ新記録の樹立を可能にした。
それとともに過去の大リーグの事例を念頭に置くと、巨額の契約にはさまざまなリスクがつきまとうことが分かる。
大型契約の弊害の典型例が、アレックス・ロドリゲスとレンジャーズの関係である。2001年に10年総額2億5200万ドルと当時の最高額でロドリゲスを迎えた。
ロドリゲスはレンジャーズに移籍してから3年連続で本塁打王になるなど契約に見合う成績を残したが、この間、チームは地区最下位。これはロドリゲスとの契約が足かせとなって他に必要な選手を獲得できず、均整の取れたチームづくりに失敗した結果とされた。
最終的にレンジャーズは契約した年俸総額の一部を負担することでロドリゲスをヤンキースに移籍させたものの、10年に経営が破綻し、所有権は球団代表のノーラン・ライアンらが共同で経営する投資家集団に売却されている。
この他にもアルバート・ベルに対し、健康上の理由で引退したにもかかわらず3年にわたり年俸を支払っただけでなく、選手登録も続けなければならなかったオリオールズや、引退表明後も1年間、プリンス・フィルダーを故障者リスト入りさせていたレンジャーズは、いずれも契約の規定に従った措置を取らざるを得なかったのだ。
メッツを保有するスティーブ・コーエンは、先物取引や信用取引で財を成した人物として知られる。そのため、ソトの獲得についても投資の一環として捉えており、最終的には損をしないと見積もって契約している。
その純資産額は大リーグの球団所有者の中で最高であり、かつてのレンジャーズに比べれば手持ちの資金は豊富である。
米国において、プロスポーツ球団の市場価値は上昇の一途をたどっている。そのため、いざとなればコーエンは球団を売却し、その利益でソトとの契約にかかった費用を清算するという選択肢も当然ながら視野に入れている。それだけに、今回の契約に対しては、ソトが期待通りの成果を上げられるかだけでなく、メッツの経営にどのような影響を与えるかも、球界関係者は大きな注意を払っている。
(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)
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