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新橋演舞場vs歌舞伎座は「朧の森に棲む鬼」の圧勝…21世紀の歌舞伎新作では最も成功(作家・中川右介)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月19日 9時26分

新橋演舞場vs歌舞伎座は「朧の森に棲む鬼」の圧勝…21世紀の歌舞伎新作では最も成功(作家・中川右介)

歌舞伎座(提供写真)

 12月の歌舞伎は、2劇場で競い合っているが、面白さでは新橋演舞場の『朧の森に棲む鬼』の圧勝だ。2007年に劇団☆新感線に松本幸四郎(当時は市川染五郎)が客演した、中島かずき作、いのうえひでのり演出の作品を、「歌舞伎NEXT」として、歌舞伎俳優たちが演じる。

 今回はダブルキャストで、主役のライと悪役のサダミツを幸四郎と尾上松也が交互に演じる。王になる野望を持つ青年ライが謀略と陰謀を重ねて王座を掴む物語で、セリフ劇の部分と、壮絶なアクションの両方がすばらしい。アクション部分で主役になるのがライの弟分キンタで、尾上右近が緩急自在に演じる。

 ダブルキャストの両方を見たが、幸四郎のライは最初から悪人で、そのバケの皮がはがれていく感じなのに対し、松也のライは野心はあるがそれほどの悪人ではないのが悪事に手を染めていくうちにだんだんとダークサイドへ落ちていく感じ。アプローチが異なるのでどちらがいいとか悪いではなく、甲乙つけ難い。もうひとつのサダミツは、自分は賢いと思っているがライによって破滅するキャラクターで、これは幸四郎のほうがコミカルさがあってうまい。

 21世紀になっての歌舞伎の新作のなかでは、最も成功している。何よりも、客に媚びていないのがいい。

 歌舞伎座は3部制。第1部は絵本が原作の『あらしのよるに』。狼と山羊が会話できるというありえない設定の劇を、大人の俳優たちがまじめにやって、大人の観客が楽しむ。

 第2部は今月唯一の古典歌舞伎で、河竹黙阿弥の『加賀鳶』を、尾上松緑の主演で上演。松緑にとっては祖父2代目の当たり役だったので、自分のものにしたいところ。中村雀右衛門、中村勘九郎など、脇がいいので見応えがある。もうひとつは、中村七之助の『鷺娘』。

 第3部の前半は中村勘九郎の舞踊劇『舞鶴雪月花』で、祖父17代目勘三郎のために作られたものを、父18代目を経由して継承。

 3部構成で、最後の「雪達磨」が圧巻。雪ダルマが踊るという、写真で見れば小学生の学芸会みたいなものなのだが、これが実に面白く、舞踊劇とはこういうものなのかと思わせる。

 最後が泉鏡花の戯曲『天守物語』で、もう演じないかと思われていた坂東玉三郎が10年ぶりに富姫を演じる。市川團子の『ヤマトタケル』を見て、彼を相手役にやりたくなったそうだが、その期待に応えて、團子は立派につとめた。

 演出も玉三郎で、舞台装置は4本の柱だけという、半世紀前の前衛劇みたいだが、照明と音楽に凝りに凝って、歌舞伎でも新劇でも前衛劇でもない、「玉三郎ワールド」としか言いようのない世界を提示している。

(作家・中川右介)

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