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その不調は更年期障害かもしれません(3)度重なる物忘れでミスが増え休職を余儀なくされた

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月19日 9時26分

その不調は更年期障害かもしれません(3)度重なる物忘れでミスが増え休職を余儀なくされた

セロトニンが減少して脳の処理速度が遅れる

 日本医療政策機構の「働く女性の健康増進に関する調査2018」によると、「現在または過去に更年期症状や更年期障害があった」と回答した人は約42%だった。

 ただ、更年期障害で代表的なのぼせ、ほてり、イライラの症状はほんの一部で、その他の症状を含めると、更年期障害が疑われる女性の数はさらに多いと推測されている。今回は、認知症に似た症状から更年期障害が疑われたケースを紹介する。

 化粧品会社に勤務する47歳の女性は、昨年春、子供が大学進学を機に実家を出たのをきっかけに夫婦2人の生活を開始した。一人息子だったこともあり、寂しさは多少あったものの、週末は夫と共通の趣味であるテニスをしたり温泉旅行に行くなど、19年ぶりの2人きりの時間を楽しんでいた。異変が起きたのはその年の11月。夕方になるとソワソワしだし、職場から帰宅するととてつもない孤独感に襲われ、理由もなく涙があふれた。

 仕事ではチームを束ねる立場にあったが、ミーティングの内容を理解できず、打ち合わせでは取引先の担当者の名前を思い出せないミスが続き、上司から叱責されるように。その後は趣味のテニスもおっくうと感じるようになり、週末は一日中部屋でボーッと過ごす生活が約3カ月続いた。

 なんとか仕事は続けていたが、感情の起伏の激しさや度重なる物忘れで自己嫌悪に陥り、休職。産業医の勧めで更年期外来を受診したところ、問診と女性ホルモンの値から更年期障害と診断された。

 野崎ウイメンズクリニック院長の野崎雅裕氏はこう話す。

「女性ホルモンであるエストロゲンは、活力を増進させてイキイキさせる働きがあります。卵巣機能の低下でエストロゲンが減少すると、ホルモンバランスが崩れて気分の落ち込みや無気力を引き起こします。また、エストロゲンの減少は、学習や記憶に関わるセロトニンの分泌量も減少させやすい。脳の処理速度が遅れて物忘れが生じるのではないかと指摘されています」

 更年期の症状は200種類以上に上り、“症状のデパート”といわれている。人によって症状の種類や重症度が異なり、野崎氏によれば、「こうでなければいけない」と白黒はっきりさせたい生真面目な性格の人ほど自分を追い込みやすく症状が強く出る傾向が高いという。

「心療内科を受診して精神症状を緩和させる薬を処方されたとしても、原因となる女性ホルモンの不足を解消しない限り症状を改善させるのは難しい。その状態が長く続くほど、本人も『これほど治療をしてもなぜ良くならないのか』と、精神的に追い詰められてしまう。40歳を過ぎて急に無気力になった、考えがまとまらなくなったのであれば、更年期障害を疑う必要があります」

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