その不調は更年期障害かもしれません(4)ホルモン補充療法は不快な症状の改善が期待できる
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月20日 9時26分
アンチエイジングも目的で続ける人も
更年期障害の治療の中心になるのが「ホルモン補充療法(HRT)」だ。これは、女性ホルモン(エストロゲン)を体外から補い、更年期に起こる不快な症状を和らげる効果が高い。
野崎ウイメンズクリニックの野崎雅裕院長が説明する。
「HRTは少量のエストロゲンを、飲み薬、貼り薬、塗り薬のいずれかで体内に取り込み、エストロゲンの減少を緩やかにする治療法です。とりわけ発汗やホットフラッシュに効果が高く、HRTを受けた9割以上は『1カ月以内に症状の改善を実感した』と報告されています」
長期間エストロゲンを単独で投与すると、子宮内膜が増殖して「子宮体がん」を発症させるリスクが高くなる。子宮筋腫などで子宮を全摘出していない人の場合、HRTを行う際は黄体ホルモン剤(プロゲステロン)を組み合わせる必要がある。
中でもHRTで懸念されるのが「乳がん」のリスクだ。2002年に発表された米国の大規模調査の結果、5年以上のHRTの実施は乳がんのリスクを軽度上昇させると報告され、治療をためらう女性も少なくなかった。
「2021年に、欧米諸国で主流とされる『天然型』の黄体ホルモン剤が日本でも処方できるようになりました。女性の卵巣で生成されるホルモンと同様の構造をしているので、乳がんのリスクを上げずに治療を行えます。『ホルモン補充療法ガイドライン(2017年度)』の序文にも、『HRTの投与継続を制限する一律の年齢や投与期間はない』と記載されています」
なおHRTには、血中のLDLコレステロール値を下げ、動脈硬化を予防したり、皮膚や粘膜の乾燥・萎縮を改善させるほか、骨量を維持して骨粗しょう症を防ぐメリットがある。そのため、アンチエイジングの観点から、更年期障害の症状が治まった後も治療を継続する女性も少なくないという。
「多くの女性を悩ませる体の不調に月経前症候群(PMS)があり、生理前に女性ホルモンが減少することでイライラや不安を引き起こしますが、更年期はまさに『長いPMS』と表現できるのです。HRTによってつらい症状をコントロールできるだけでなく、失われた意欲や気力、食欲や性欲を回復させるので、QOL(生活の質)の向上が期待できます」
ただ、HRTの副作用に血栓症のリスクがあるため、血栓塞栓症や脳卒中、その既往がある人は受けられない。また乳がんや子宮体がんの場合も適用外だ。持病や病気の既往歴がある場合、更年期外来を受診する際は医師にしっかりと伝えたい。 (おわり)
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