高血圧の人はヒートショックの危険が増大する…薬を飲んでいても注意
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月21日 9時26分
血圧は寒暖差やストレスで大きく変動する
歌手の中山美穂さん(享年54)が「入浴中に起きた不慮の事故」により亡くなったことで、あらためて「ヒートショック」の危険性がクローズアップされている。老若男女だれしも注意が必要だが、中でも「高血圧症」の人は、たとえ治療中でもリスクがアップするというから気を付けたい。東邦大学名誉教授で循環器専門医の東丸貴信氏に聞いた。
「ヒートショック」とは、寒い環境と暖かい環境との温度差が10度以上になるような激しい温度変化によって血圧の急激な上昇と下降が起こり、心筋梗塞、心不全、大動脈解離、不整脈、脳卒中といった命に関わる病気を引き起こす現象で、入浴はその典型的な現場といえる。
寒い脱衣所で衣服を脱ぐと血管が収縮して血圧が上昇し、浴槽で43度以上の熱い湯につかるとさらに上がる。体が温まってくると、今度は血管が緩んで広がるので血圧は下がるが、風呂から上がって再び寒い脱衣所に出ると、急上昇する。短時間でこれだけ急激な血圧の上下動を繰り返すことで、血管や心臓に大きな負担がかかるのだ。
とりわけ、血圧が高い人はリスクがアップするという。
「高血圧症の人は動脈硬化が進んでいるケースが多い。高血圧により血管に常に強い圧力がかかることで血管の内側を守る内皮細胞が傷つくと、悪玉のLDLコレステロールが血管壁に入り込みやすい状態をつくります。このLDLコレステロールは性質が変えられ(酸化)、貪食細胞に食べられます。その貪食細胞の死骸などが瘤のように肥大化してプラークとなり、動脈硬化が進行するのです。動脈硬化によって血管の弾力性が失われると、血圧が上下動したときの変動幅が大きくなります。そのため、高血圧症がある人は、入浴時に生じる血圧の上下動への対応が不十分になり、ヒートショックを起こすリスクがアップするのです」
また、血圧の変動によって血管に負荷がかかると、プラークが破綻して血小板が凝集し、血栓ができやすくなるという。
「血圧上昇の原因として交感神経の亢進が重要で、交感神経が活発に働いていると、血小板がお互いに密着して塊になり(凝集)、血栓ができやすくなります。そのため、高血圧症の人がヒートショックの状態になると、脳動脈や冠動脈に血栓ができて、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こすのです。また、血管が傷んでいるので、急激な血圧上昇で脳出血も起こりやすいといえます」
■入浴前に血圧を測る
高血圧症で降圧薬を服薬している人も安心してはいけない。
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