悠仁さまの進学先も、紀州のドン・ファン裁判も…メディアの敗北は兵庫県知事選の後も続く(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月22日 9時26分
須藤早貴氏(C)日刊ゲンダイ
【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】
今年は「メディアが敗北した年」として記憶されることになるに違いない。
斎藤元彦の出直し県知事選圧勝。秋篠宮家の悠仁さんの筑波大学入学。紀州のドン・ファン殺人事件で無罪判決。いずれもメディアは判断を間違えた。
斎藤に対して、メディアがスクラムを組み激烈なバッシングを続け、それに押された県議会は全会一致で不信任決議案を可決した。日本中に「斎藤辞めろコール」が鳴り響いた。
再選をめざして駅前の1人立ちから始めた斎藤は、SNS効果もあっただろうが、次第に支持者を増やしていった。
「一方でメディアに向けられた視線は非常に厳しいものがあった。斎藤知事を支持する方々に話を聞いたが、『テレビにだまされた』『あなたたちは嘘を伝えていた』と叱責を受けた。『これが民意だから』『(選挙で)あなたたちと私たちのどちらが正義かわかるはず』と厳しく指摘された」(MBS NEWS12月16日14時38分配信)。
斎藤が圧勝した時、それまでさんざん彼を批判してきた宮根誠司が「Mr.サンデー」(フジテレビ系)で、「大手メディアのある意味、敗北です」と渋い顔をして言ったのが象徴的だった。
12月11日、悠仁さんが筑波大学に合格したことが発表された。だが、「あれ、東大農学部じゃなかったの」と首をかしげた人も多かったはずだ。
元皇室記者で成城大の森暢平教授は、悠仁さんの「東大志望説」はフェイクニュースだったと難じている(サンデー毎日12月29日号)。最初に東大進学説を唱えたのは悠仁さんがまだ幼稚園児のときの週刊朝日(2012年9月21日号)だった。その後も週刊誌を中心に東大進学説が広まっていったのは、“脱学習院”を教育方針にした秋篠宮家、特に母親の紀子さんなら考えそうなことではないかというメディア側の“予断”があったものと思われる。
夏ごろからネットで悠仁さんの東大進学に反対する署名活動が始まり、1万人以上の署名が集まったといわれる。デマに踊らされたネット民の軽挙妄動に、紀子さんは誕生日会見で、ネット上でのバッシングで心穏やかに過ごすことが難しく悩んでいると、珍しく心の内を吐露した。
東大一直線と信じ込んでいた週刊誌にとって筑波大進学は予期せぬ出来事だった。それは皇室情報に強い女性自身(12月17日号)でさえ、当日、悠仁さんが筑波大の推薦入試を受けているという情報が入り、「本誌が茨城県つくば市に急行すると、大学の門の前には複数のテレビ局のカメラを構えたクルーたちが……」と書いていることからもうかがえる。
悠仁さんが筑付に入った時点で、筑波大へ進学することが自然だったはずなのに、メディアは自分たちがでっち上げた「神話」に自らが振り回されてしまったのだ。
12月12日、紀州のドン・ファン殺人事件の1審判決が出た。検察側は無期懲役を求刑していたが、裁判長は「殺害したとするには検察側の立証が不十分だ」と、元妻・須藤早貴被告に無罪を言い渡した。私は少し前のこの欄で、自白もなく状況証拠だけで有罪にはできないと書いたが、裁判員たちは正しい判断を下した。
それにしても事件発生直後の須藤に対するメディアの報道は苛烈を極めた。彼女を犯人と決め付け、プライバシー暴露合戦を繰り広げたのだ。
しかし、「人質司法」にもくじけず犯行を否認し続けた彼女の強固な意志の前に、ここでもメディアは敗北したのである。 (文中一部敬称略)
(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)
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