韓国のダンス音楽に席巻され低迷するエンタメ界…日本が誇る「歌唱力あるソロ歌手」が起爆剤になる
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月26日 9時26分
倖田來未(C)日刊ゲンダイ
【芸能界クロスロード】
「マイク1本で勝負できる歌手になりたい」
デビュー25周年を迎えた倖田來未(42)がスポーツ報知のインタビューで語った言葉である。言い換えれば歌唱で魅了する歌手を目指すと解釈できる。
歌手の理想とされる姿だが、昭和歌謡では当たり前のことだった。歌番組の特番を見れば、演歌はもちろん女性アイドルもJ-POPもソロ歌手が主流。沢田研二も中森明菜も、楽曲によって衣装・フリは変わってもメインは歌で魅了。数多くのヒット曲が生まれた。その後ダンスミュージックが主流になり、ソロ歌手は歌以外のプラスアルファが求められた。
倖田は全米デビュー後、逆輸入で日本でも始動したが思うように売れず、下積みを経て路線変更した。肌を露出した衣装、腰をシェークするダンスを取り入れ、「エロかっこいい」と呼ばれブレーク。「くぅちゃん」の愛称で女性からも支持された。「エロかっこいい」が倖田の代名詞になったことで、常に歌とエロがセットになった。
29歳で結婚した倖田もすでに1児のママ。エロを封印する時期に来ている。
「ママ歌手の森高千里は55歳になった今も舞台ではミニ。往年のファンは歌だけでなくミニも求める。倖田の意気込みは買えるが、エロを抑えて今まで通り観客を呼べるかは未知数」(音楽関係者)
倖田が「マイク1本」にこだわる背景に近年のソロ歌手の活躍があると思う。
今年の「紅白」の特別枠で新たに出演が決まった玉置浩二と米津玄師。2人とも余計な演出の一切ない正統派のソロ歌手だ。
3人のレジェンドに次ぐのがMISIA
倖田が挑もうとしている女性の世界も粒ぞろい。松任谷由実、高橋真梨子、中島みゆきは昭和から令和まで第一線で歌い続けるレジェンド。
「彼女たちの歌は世代を超えて聴く人の心に届く。生の歌声を聴きたいとコンサートに足を運ぶファンは絶えず、チケットも取りにくい」(音楽関係者)
なかでも中島の存在感は今も輝き続けている。放送中のNHK「新プロジェクトX」のテーマソング“地上の星”は24年前に発売された曲だがいまだに新鮮に聞こえる。今月末にはコンサートの模様が劇場版で公開されるのも人気のすごさを物語る。
3人のレジェンドに次ぐのがMISIA。「紅白」もトリも含め今年で9回目の出場。女性ソロ歌手初の5大ドームツアー制覇。東京五輪開会式で「君が代」を独唱した。
デビュー26年になる宇多田ヒカルは安定した人気。若手ではあいみょん、aiko、異色のシルエット歌手・Adoと続く。3人ともこの先、どう化けるのか関心が高い。演歌界では島津亜矢の存在感が際立つ。島津は子供の頃から「演歌の申し子」と呼ばれ、熊本から上京。苦労を重ね徐々に頭角を現した。演歌に限らずあらゆるジャンルの楽曲を圧倒的な歌唱力で歌い上げる姿は「歌怪獣」と呼ばれ、若い人からも支持されている。今年3月“AYA Shimazu”の名前で全世界デビュー。ソウルからR&Bまで世界に配信された。歌も映画のように配信でヒットする時代。「米国音楽界の厚い壁を破る可能性も秘める」と期待されている。
韓国グループによるダンスミュージックが日本のエンタメ界を席巻するなか、日本が誇るソロ歌手が低迷する歌謡界の起爆剤となる。
(二田一比古/ジャーナリスト)
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