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足の切断リスクが高い人が治療拒否するのはなぜか【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月26日 9時26分

足の切断リスクが高い人が治療拒否するのはなぜか【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

現実的なイメージが湧かない…(C)日刊ゲンダイ

【日本版「足病医」が足のトラブル解決】

 足裏にできた傷を放置したまま歩き続けると、傷口に圧がかかって治りが悪くなります。足の傷を治すためには、創傷部位の安静のほか装具の着用で、患部にかかる圧を減らす「除圧・免荷」を行う必要があります。ただし、交通事故や糖尿病性足病変などで足が変形している人が健常者と同じような靴を装着して歩行を続けると、骨の変形部分に負荷がかかりその部分に潰瘍が生じてしまい、場合によっては足の切断を余儀なくされるケースも少なくありません。

 以前、当センターを受診されたのは都内のメーカーで営業職として働く50代後半の男性。数年前に交通事故に遭い、足の指をすべて切断したと言います。職業柄、取引先に出向く機会も多く、日頃から本人にとって歩きやすい市販のスニーカーを履いて過ごされていました。ですが、足指の切断により足の変形を生じている人が市販の靴を履くと、足指の切断部(断端部)に傷ができやすい。ご自身の足の形状に合ったオーダーメードの靴型装具の作成が望ましいのですが、それに伴う一時的な出費と靴のデザイン性から、オーダーメード靴の作成をためらわれていました。

 そうこうしていると仕事が繁忙期に入り、忙しく歩き回るうちに断端部に傷ができてそこから細菌感染を起こしてしまったのです。放置すれば細菌が血液中に入り込み、重症化すると死に至る「敗血症」のリスクが高い。潰瘍が悪化した上に感染を併発したため、膝下での切断に至りました。この男性のように、治療を躊躇される患者さんの多くは、ご自身の足に合ったインソールや靴を作らないことで将来的にどういった弊害が生じるのか、現実的なイメージが湧いていないからです。われわれ医師は心を鬼にして、患者さんが腑に落ちる説明を行う必要があるのです。

「糖尿病が悪化して、他の病院で膝下での切断を宣告されたのですがどうも納得がいかなくて……」という相談で都外から遠路はるばる当院を受診されたのは、60代前半の男性でした。

 足を診ると、糖尿病による血行障害や神経障害によって足の親指が黒く変色し、壊疽を起こしているのは確かでした。しかし検査の結果、血行障害や感染の範囲から親指の付け根での切断が可能で、下腿を残せる可能性が高いと分かったのです。

 しかし、手術やそれに伴う長期間の入院、術後は定期的な受診が必要である旨を説明すると、「仕事に穴をあけられない……」と、治療を渋る様子がうかがえます。

 そこで、「膝下での切断を回避して残った足の機能を生かすことは、術後の生活をより良くするためのベストな選択であること」「当院であればその治療が可能であること」「オーダーメードの装具を作れば術後も歩けること」をお伝えしたところ、患者さんも納得して治療を受け入れてくれました。術後はリハビリテーションに熱心に取り組まれていた甲斐もあり、現在は靴型装具を着用しながら職場復帰を果たしています。

(田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)

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