時計遺伝子と老化との深い関係…ノックアウトマウスで明らかに【長寿研究のいまを知る】#15
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月26日 9時26分
「時計遺伝子と老化の関係は、すでに多くの研究から明らかにされており、乱れた生体リズムが老化や疾患リスクに悪影響を及ぼすことは以前から指摘されていました。1971年、ショウジョウバエの変異体研究において米国の研究者が1日が18時間や30時間のハエ、体内時計を持たない変異体を発見したことが、この研究分野の始まりです」
1984年にはショウジョウバエで最初の体内時計遺伝子が発見され、1997年にはヒトを含む哺乳類にも体内時計遺伝子が存在することが確認された。
さらに2006年には、Bmal1遺伝子を欠損したマウスが早期老化を示すことが論文で報告されている。研究によれば、ほとんどのノックアウトマウスは生後26~52週で死亡したのに対し、通常のマウスは平均で2年以上生存したという。また、52週時点での体の大きさもノックアウトマウスは通常の半分程度だったとされている。
「私のハーバードの研究室でもBmal1遺伝子ノックアウトマウスにおける老化制御について最新研究成果が得られ、本年10月に開催された米国腎臓病学会総会で報告しました。皮下脂肪組織の減少は、ヒトを含む哺乳類において老化の主要な指標ですが、40週齢のノックアウトマウスでは顕著な脂肪組織の減少が確認されています。発毛に関しても、30週齢のマウスの背中の毛を剃って再生状況を観察したところ、ノックアウトマウスでは4匹中1匹だけが3カ月後に部分再生したのに対し、通常のマウスは4匹すべてが1カ月で再生したと報告されています」(根来医師)
こうした研究結果は、ヒトにおいても時計遺伝子の正常な機能を保つことが老化を遅らせる可能性を示しており、時計機構の調整が老化防止の新たな治療ターゲットとして注目されつつある。
2017年には、体内時計のリズムを刻む遺伝子機構を解明した研究により、米国の3人の研究者がノーベル生理学・医学賞を受賞したことも、体内時計研究の重要性を示している。
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