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「睡眠不足」は記憶力、精神面、認知症リスクに影響を与える【科学が証明!ストレス解消法】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月27日 9時26分

「睡眠不足」は記憶力、精神面、認知症リスクに影響を与える【科学が証明!ストレス解消法】

睡眠不足は記憶力が低下させる

【科学が証明!ストレス解消法】#197

 脳の記憶には、「短期記憶」と「長期記憶」があります。記憶をつかさどることで有名な「海馬」という部位は、短期記憶を処理する部分です。海馬の中で短期記憶が整理され、重要な情報と判断されると「大脳新皮質」に移行して長期記憶として定着します。つまり、ちょっとした出来事であっても、長く記憶したいことであっても、情報はひとまず海馬に行くということになります。

 そして、効率良く脳を働かせるには、脳の血流をよくすることが重要です。脳の燃料である酸素は、血液に乗って運ばれます。例えば、「あれ? 今何をしようとしていたんだっけ?」となってしまう原因は短期記憶に関わる問題ですが、長期記憶も短期記憶も海馬の働きがポイントになるわけですから、脳に酸素をしっかりと送らなければいけません。

 その上で欠かせないのが「睡眠」です。寝不足だと脳が正常に活動できなくなるため、物事を思い出す機能が低下します。脳は深く眠っている間に記憶を定着させるため、睡眠時間が短く深く眠る時間が少ない人はその分、記憶を定着させる時間が減り、結果的に記憶力が低下してしまうのです。

 東北大学の瀧らによる調査によると、睡眠不足は長期的な記憶についても問題を起こすことが分かっています。5歳から18歳までの健康な子ども290人(男女比は半々)の頭部のMRIを撮影して脳の形態を調べると同時に、アンケートによって同じ子どもたちの生活習慣を調査しました。

 すると、睡眠時間が1日5~6時間ぐらいの子どもたちよりも、9~10時間ぐらいの子どもたちのほうが海馬が1割程度大きかったという結果が分かりました。つまり、睡眠時間が長い子どもは、短い子どもよりも海馬が大きくなる傾向があるといえるのです。

 睡眠不足が脳に悪影響をもたらす研究は多数存在します。

 国立精神・神経医療研究センターの研究チームが行った実験(2013年)では、睡眠不足時にはネガティブな情動刺激に対して扁桃体の活動量が増大することが明らかになっています。

 この実験では、健康な成人男性14人を対象に、5日間の1日8時間睡眠と同4時間睡眠の両方を体験してもらうというものでした。その上で、MRIを用いて脳活動の変化を観察したところ、短期間の睡眠不足でも情動的な不安定が増大--寝ていないときにネガティブな情報を受け取ると、いつも以上に精神的に落ち込んでしまうことが分かったといいます。

 また、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβというタンパク質は、睡眠中に脳の血管から脳外へ排出されていきます。そのため、睡眠時間が足りないとアミロイドβが脳に蓄積され、認知症リスクが高くなってしまうともいわれています。

 私たちが想像している以上に睡眠不足は恐ろしいことです。仮に寝る時間が十分に取れないのであれば、睡眠の質を高める工夫をするようにしてください。睡眠に対する投資は、未来のあなたを健全へと導くのです。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)

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