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肺がんの重粒子線・陽子線治療は肺機能低下の高齢者に勧めたい【2024年に注目された医療】#3

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月30日 9時26分

肺がんの重粒子線・陽子線治療は肺機能低下の高齢者に勧めたい【2024年に注目された医療】#3

2020年に新たに肺がんと診断された人は約12万人

【2024年に注目された医療】#3

 がん治療において今年の大きな話題のひとつが重粒子線・陽子線による早期肺がん(5センチ以下でリンパ節転移なし)治療の保険適用だ。6月から実施されている。対象はステージⅠ~ⅡAの手術不可の早期肺がん。保険適応の拡大でこれまでなら300万円ほどかかった治療費が高額療養費制度の利用や収入等により10分の1以下になることも。肺がんの患者やその家族にとっては朗報となった。

 肺がんは減少傾向にあるとはいえ、2020年に新たに肺がんと診断された人は約12万人、2022年に肺がんで亡くなった人は7.6万人(全がん死のなかで第2位)という怖い病気だ。重粒子線・陽子線治療は長らく先進医療として扱われ肺がんに効果があることは知られていたが、その費用の多さが欠点だった。

 そもそも重粒子線・陽子線治療はどんなもので、これまでの放射線治療と何が違うのか?江戸川病院(東京都江戸川区)の黒﨑弘正・放射線科部長が言う。

「放射線治療には、体の外側から照射する(電子線、X線、γ線、中性子線)タイプと、体の内側から照射する(密封小線源治療、非密封放射性同位元素による治療)タイプがあります。重粒子線・陽子線は体の外側から照射するタイプです。その特徴は一般的な放射線治療で使われるX線などよりも切れの良い粒子を使ってがん細胞を強力に破壊することにあります」

 X線は体の表面近くで放射線量が最大となり、体内に入ると少しづつ吸収され減っていく。ところが、重粒子線や陽子線は体の中に入って停止する直前にエネルギーを放出する。そのため標的とするがん細胞にピンポイントで強い照射が可能となる。つまり、がん細胞の位置や腫瘍の大きさを正確に測定し、そこにピークを持っていければ、がん細胞を一気に破壊することが可能となる。

「重粒子線と陽子線の違いは、治療に用いる原子核の違いです。陽子線治療では水素、重粒子線では炭素の原子核を使います。炭素の原子核の質量は水素の12倍ですので、重粒子線の方がより強力ということになります。一方で、陽子線はよりピンポイントでの照射が可能となるため、正常細胞への影響が少なく照射できるメリットがあります」

 しかし、ステージⅠ~ⅡA期の早期肺がんに、これほど強力の治療が必要なのか?

「肺機能が低下している早期肺がんに粒子線治療の優位性が報告されています。間質性肺炎合併例では放射線肺臓炎の発症リスクが高いのですが、粒子線治療によってリスクが大きく減るという報告があります。実際の臨床現場においてもピンポイントX線治療(SBRT)が困難であることを理由に粒子線治療施設に紹介されることが増えつつあります。『手術は嫌』という人を含めて、手術ができず肺機能が落ちている高齢な早期肺がん患者にお勧めです」

 とはいえ、粒子線治療ができる施設は全国で30ほど。希望者がすべて受けられる治療ではない。比較的身近なSBRTの方が腫瘍を追尾して、結果として照射範囲が狭くなることもありえる。興味がある人はまず主治医・放射線腫瘍医に相談することだ。

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