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2024年で営業終了…大阪ミナミの“魔窟”「味園ビル」に魅せられた一夜【話題の現場 突撃ルポ】

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月31日 9時26分

2024年で営業終了…大阪ミナミの“魔窟”「味園ビル」に魅せられた一夜【話題の現場 突撃ルポ】

ネオン煌めく(C)日刊ゲンダイ

【話題の現場 突撃ルポ】

「お客さん、チェックアウトの時間ですよー!」。ホテルのドアをノックする清掃員の呼びかけに飛び起き、激烈な二日酔いにうめきながらハッとした。アラームをかけ忘れ、眠り込んでしまったらしい。大寝坊をかます数時間前、本紙記者は大阪ミナミの「味園ビル」でグラスを重ねていた──。

 近鉄日本橋駅から徒歩2分。黒門市場のほど近くに味園ビルはそびえる。1956年の完成以来、約70年にわたり“ミナミの顔”として君臨してきた。

 地上5階、地下1階の建物に、かつては2~4階をぶち抜いたキャバレー「ユニバース」が営業。デビュー前の和田アキ子やブレーク前のピンク・レディーが舞台に上がったなど、エピソードに事欠かない。

 キャバレー人気の凋落や大規模改修を経て、2階に約40軒のバーやスナックがひしめく今の姿に。国内外から「ミナミの魔窟」として親しまれてきたが、2024年末を最後に2階店舗は営業終了。25年5月にはビルが解体される予定だ。

 最後を目に焼き付けようと、本紙記者が現地を訪れたのは12月初旬のこと。噴水が湧く池の脇から2階へと延びる豪奢なスロープを上がる。バーやスナックを横目に「口」の字に続く通路を歩いてフロアを一周すると、古いビル特有のホコリっぽさに、お香をたいたような気だるく甘い香りが充満していた。

 フロア入り口にたたずむバー「ロイヤル・クラウン」は19周年を迎えた老舗だ。黒を基調とした店内は中央からぶら下がるシャンデリアが妖艶な雰囲気を醸し出す。ムーディーな空間に気おされたが、スタッフのサトシさん(37)は2階テナントの契約終了について気さくに教えてくれた。

「25年1月15日までに完全撤収すればいいそうで、年明けも片付けをやりつつ開ける店もあるとか。期限までに撤収しなければ、賃料の3倍を取られるなんて話もあります。コロナ前からビル自体はなくなると言われていたので、24年5月にビルの運営側から『年内で契約終了』とのアナウンスがあった際は『いよいよ来たか』と。11月末くらいから、『味園ビル、終わりなんですよね』と初めて来られる方もいらっしゃいます。インバウンドのお客さんも多いですね」

 カウンターに並んで座っていた男女の常連客は「さみしなるなぁ」と口をそろえていた。

生前葬を執り行えるバーも

 正統派のバーもあれば、一風変わったコンセプトのバーも。祭壇を常設している「なんば白鯨」だ。店内に入ってまず、白木の立派な祭壇が目に飛び込んでくる。その日、遺影に飾られていたのは米ミュージシャンのフランク・ザッパだった。

 偶然にもカウンター席で隣り合った男性客は大阪ロフトプラスワンウエストの店長。長渕剛の「乾杯」が流れる中、祭壇バーならではのエピソードを披露してくれた。

「この店で24年4月に自分の生前葬を執り行ったんです。ちゃんと棺桶に入って、30人ほど参列者が来てくれました。イベントの最後にオリジナルソングを披露したのがいい思い出です」

 味園ビルの魅力は数珠つなぎで、あらゆる店を堪能できること。府外からの客はもちろん、東京から週1回のペースで通う常連もいるのだとか。

 この日、数軒回った本紙記者も「魔窟」に魅せられ、ついつい飲み過ぎてしまった。取材メモには「死ぬほどセックスした」と残されているが、誰の何の発言なのかサッパリだ。ただ、あやふやな記憶の中でハッキリしているのは、味園ビルの居心地のよさ。おおきに。

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